電子マネー、2陣営の客囲い込み激化 ローソン、ワオン導入でセブンに対抗

コンビニエンスストア大手のローソンは15日、全国約1万2200店の店舗で、流通大手イオンの電子マネー「WAON(ワオン)」の導入を始めた。 ローソンのワオン導入で、流通系の電子マネーは、コンビニ大手のファミリーマートも導入しているワオンと、セブン&アイ・ホールディングスの 「nanaco(ナナコ)」の2陣営に大きく分かれた。今後は両陣営による顧客の囲い込みが激しくなりそうだ。

◆なりふり構わぬ戦略

ローソンがイオンと手を組む背景には、セブン&アイ傘下でコンビニ最大手のセブン−イレブン・ジャパンとの差がなかなか縮まらないことに加え、業界3位の ファミリーマートと業界4位のサークルKサンクスの親会社ユニーグループ・ホールディングスの経営統合が基本合意に達したことで、店舗数では大きく引き離 された3位に転落することがある。

流通業界に詳しい日本経済大の西村尚純教授は「小売業界の変化は早く、各社とも(電子マネーや共通ポイントなど)自分の経済圏に顧客を囲い込むためには、なりふり構っていられない」と分析する。

ローソンによると、ワオンの利用者にはイオングループのスーパーやドラッグストアを利用するシニア層や主婦層も多く、ローソンは今回の提携でこうした客層を取り込みたい考えだ。

イオンにとっても、今回の提携で約1万2200の利用可能箇所拡大につながり、さらなる利便性向上と顧客の囲い込みが期待できる。両社は共通のライバルであるセブン&アイへの対抗で一致し、手を組んだ形だ。

2007年4月に始まったワオンは、15年10月末時点で発行枚数が約5320万枚に達した。イオングループ各社に加え、グループ外でもファミマや中堅の ポプラ、牛丼大手の吉野家など幅広い相手と提携を進めている。利用可能箇所は今年10月末時点では約22万6000カ所で、新たにローソンが加わり、利用 可能箇所は24万カ所前後に増える見込みだ。

対するナナコは07年4月にスタートし、15年10月末の発行枚数は約4337万枚、利用可能箇所は約20万4800カ所とワオンとほぼ互角だ。

利用可能な場所は、セブン&アイ傘下のコンビニやスーパー、百貨店などグループ各社が中心だが、家電量販大手のビックカメラやダスキンが展開する「ミスタードーナツ」の店舗などグループ外での導入も徐々に増えている。

◆11.3兆円に拡大試算

野村総合研究所の試算によると、15年度の電子マネーの決済額は約4兆9000億円で、20年度には約11兆3000億円に拡大する見通しだ。

電子マネーをめぐっては、ワオンやナナコ以外では01年に参入し約9280万枚の発行がある楽天の「楽天Edy(エディ)」、04年に東日本旅客鉄道 (JR東日本)が導入し、現在は北海道から九州までの鉄道11社の間で乗車券として相互利用も可能となった「Suica(スイカ)」なども多くの発行枚数 で存在感がある。市場の拡大によって、ますます顧客争奪戦が激しくなりそうだ。(永田岳彦)

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