電子メールをのみ込め フェースブックが「次世代のメッセージサービス」

世界最大の会員制交流サイト(SNS)を運営する米フェースブックは15日、会員同士が連絡を取り合うメッセージ機能を拡充し、電子メールやチャットなどと統合した次世代のメッセージ・サービスを立ち上げたと発表した。記者会見したマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者=CEO=(26)は「コミュニケーションがもっとシンプルで軽快になる」と語り、5億人の会員を抱える強みを生かしてライバルを凌駕(りょうが)することに自信をみせた。
 ■SMS・チャットを統合
 「これは電子メールに対抗するサービスではない。電子メールも含む(大きな)交流サービスだ」
 複数の欧米メディアによると、米サンフランシスコで開いた記者会見で、ザッカーバーグ氏はこう強調した。
 新サービスでは、全会員に「@facebook.com」という形式のメールアドレスを無償提供するほか、携帯電話間で短い文章をやりとりするショートメッセージサービス(SMS)やチャット(オンラインでのおしゃべり)を統合する。会員同士の場合、どの方法を用いても相手が同じなら送受信履歴が時系列に並ぶという。
 ザッカーバーグ氏が新サービスの普及に自信をみせるのは、フェースブックが米国を中心に若い世代のコミュニケーション手段を熟知しているという自負があるからだ。米国のネットユーザーでは、若い世代は電子メールより手軽なSMSやチャットを好む傾向がある。しかし、年長者は圧倒的に電子メールだ。このため、電子メール、SMS、チャットそれぞれの送受信内容の履歴が分散し、誰とどんなやりとりをしたかわかりにくくなっている。そこで、すべてを統合して利便性を高めるのがフェースブックの戦略だ。
 「実際にサービスが始まれば、これが将来のコミュニケーションのやり方だとわかるようになるよ」。ザッカーバーグ氏は会見でこう言い放った。
 ■一気に首位の可能性
 今回の新サービスでは、会員以外とも手軽に情報をやりとりできるようにすることでフェースブックの利便性を大幅に高めることも盛り込まれた。そこには、メールサービスで先行するマイクロソフトやヤフーの牙(が)城(じょう)を切り崩し、利用者を大幅に増やす狙いがある。
 ブルームバーグが米調査会社コムスコアの調査結果として報じたところによると、全世界で利用者が最も多いメールサービスはマイクロソフトのホットメールで利用者は約3億6170万人。ヤフーメールは2億7310万人。グーグルのGメールは1億9330万人(いずれも今年9月時点)だ。この状況で、会員数約5億人のフェースブックがメールサービスを始めれば、一気に首位に立つ可能性がある。
 それだけに、こうした新しい“統合型”のコミュニケーションサービスにライバルは危機感を募らせている。
 米グーグルは先ごろ、フェースブックに実施してきたGメールのアドレス情報の提供を停止する方針を示した。情報提供が一方的でフェースブックから見返りが得られていないと説明するが、急激に利用者を増やすフェースブックへの対抗措置なのは明らかだ。
 ネット大手の激烈な企業間競争に終わりはない。
【用語解説】フェースブック 2004年にハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグ氏が創業。もともとハーバード大学の学生の交流促進が目的だったが、全米の大学生に広がり、06年秋以降、誰でも利用できるようになった。社員は1400人で、8カ国にオフィスがある。全世界の会員数は約5億人。米フォーブス誌は08年、ザッカーバーグ氏を遺産相続などに頼らない最年少の億万長者と紹介した。現在の資産は69億ドル(約5600億円)。

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