電気料金10万円超えも? 東北電値上げ計画でオール電化家庭は戦々恐々

東北電力が4月に計画する家庭向け電気料金の引き上げに、家のエネルギーを電気に頼らざるを得ないオール電化住宅の居住者が戦々恐々としている。燃料価格の高騰で電気代が既に2倍以上になった世帯が続出し、月の請求が10万円という高額も現実味を帯びる。「さらに上がったらどうすればいいのか」。特長だった夜間が割安な設定が見直され、影響はオール電化世帯ほど大きくなっている。
(報道部・関川洋平)

おととしの2・7倍請求

 「思い切り節電して、これか」。仙台市泉区の公務員田子和幸さん(51)は1月分の電気代にため息が出た。オール電化の一戸建てに妻と2人暮らし。請求は約3万8000円だった。蓄熱式暖房を切るなどして使用量を前年比で3割以上減らしたが、請求は逆に約3000円増えた。

 おととし1月の約1万4000円と比べれば実に2・7倍。田子さんは「節電しなかったら6万円を超えていたはず。オール電化の負担は大きい」と訴える。

 「10万51円」。東松島市の会社員男性(61)は東北電から昨年12月に届いた資料に目を疑った。向こう1年の電気代の試算で、1月分が今まで見たことのない「10万円超え」だった。

 オール電化向けを含む家庭向け自由料金は、燃料価格が上がっても料金に反映されるのには上限があったが、それが昨年12月に撤廃され、燃料高騰がそのまま価格に響くようになった。

 6人暮らしの男性宅の電気代は11月の約3万3000円から、12月に約6万5000円に倍増。節電に励み1月の請求額は約9万8500円と何とか10万円を切ったものの、4月には追い打ちをかけるように値上げが迫る。2~9月分は政府の負担軽減策(1キロワット時当たり7円)が適用されるが、男性は「その先は覚悟しないといけない」とうめく。

昼夜間の単価差見直し、オール電化に影響大きく

 東北電の改定案では家庭向け自由料金の値上げ率は平均7・69%だが「よりそう+ナイト8(時間帯別電灯A)」「よりそう+シーズン&タイム」などオール電化向けの17プランに絞ると平均10・33%になる。

 これらのプランは「昼夜間の単価差の見直し」として、昼間の単価を下げ、夜間の単価を上げる。オール電化は夜間に多くの電気を使って蓄熱式暖房機や電気温水器を稼働させるため、影響が大きくなる。

 単価差を見直すのは、再生可能エネルギーの拡大で電気が余る時間帯が変わったためだ。以前は電力需要が少ない夜間に余りがちだったが、現状は太陽光発電が稼働する昼間に余剰が生じやすく、夜間の需要は以前より高まっている。

 オール電化住宅の建設を手掛ける大東住宅(仙台市)の高橋一夫社長(58)は「ガスなども値上がりしており、総合的にはまだオール電化に分があるが、夜間料金がこれだけ上がるとオール電化のメリットは相当薄れる」と見る。

 スモリ工業(同)の庄司文男常務(72)は「昼夜の電気料金があまり変わらないと、夜に大量のお湯を沸かす電気温水器などはかえって非効率になる」と説明。客には電気の使用が夜間に偏らない設備を薦めるようになったという。

 グループを挙げてオール電化住宅の普及を進めてきた東北電。樋口康二郎社長は1月31日の定例記者会見で「心苦しいが安定供給のためにかかったコストは回収させてほしい。省エネ機器への入れ替えなどお客さまにメリットのある提案をしていきたい」と述べた。

 オール電化向けを含む家庭向け自由料金の改定は、国の認可が不要。一方、国の認可が必要な家庭向け規制料金について、東北電は4月に平均32・94%引き上げる案を国に提出して現在審査を受けており、審査結果次第で自由料金の改定内容も変わる可能性はある。

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