家具に使用、人の動きリアルタイムで把握
東北大で生まれた電気を通す天然繊維を活用した健康・介護製品開発を手掛けるベンチャー企業、ビヨンドエス(仙台市)が、健康管理に活用できる家具や見守りシステムの実用化を進めている。シルクや和紙などをセンサーとして、椅子やベッド、壁紙などに使用。人の動きをリアルタイムで把握する仕組みの提供を目指し、価格やメンテナンス方法などを検討する。
天然繊維のシルクや和紙は通常、電気を通さない。東北大の鳥光慶一特任教授の研究グループは、シルクに導電性の高分子を組み合わせて電気を通すことに成功した。
電気を通す天然繊維は、金属を使わないため肌に優しく、折り曲げても壊れにくいなどの利点がある。新技術の活用に向けて鳥光氏らは2020年10月、ビヨンドエスを設立。鳥光氏は代表取締役も務める。
同社は座面に電気を通す天然繊維を使った椅子を製作。他に特別な装置を使うことなく「さりげなく」(鳥光氏)座った時の圧力を1秒に10回ほど計測し、姿勢の特徴を直感的に把握できる。
ベッドに活用すれば、寝ている時の姿勢の確認が常時可能になる。新型コロナウイルス禍で中断しているが、寝たきりの人の床ずれ防止を狙い、介護施設などで実証試験を計画する。
圧力以外に動きも検知できるため、部屋の壁紙などへの利用も想定。ほかにも水分検知機能など応用範囲は広く、他の企業と共同開発する案件もある。
展示会での反応も上々という。実用化はこれからだが、鳥光氏は「全体でIoT(モノのインターネット)ハウスのようなもの。プライバシーの問題は考えなければならないが、介護が必要な人や1人暮らしの高齢者の見守り活動や業務を支えたい」と未来を描く。
日本政策金融公庫(日本公庫)と仙台銀行は2月末、両者の創業者向け協調融資商品「RUN UP」を使ってビヨンドエスに融資した。金額は非公表。日本公庫仙台支店の担当者は「販路形成は苦戦しているが、次の局面に進むための後押しをしていく」と話す。