いろいろな人たちが乗っている電車。実生活では関わることのないタイプの人も乗っているからこそ、意図しないトラブルやもめ事が発生する機会も少なくない。今回、20~40代男女が、「同じ電車に乗り合わせたくない」「ヤバい」「怖い」と感じている、モンスター乗客の事例を集めた。(取材・文/フリーライター 池田園子)
電車内に生息するモンスター乗客たち
昨今、電車に乗ると、ほとんどの人がスマホに目を落としている。おのおのスマホゲームをしたり、ニュースアプリを読んだり、LINEやメールに返信したりと、思い思いの過ごし方をしている。彼らは静かに過ごす人たちであり、電車内で波風を立てることはない。 一方、びっくりするような人に出くわすこともある。「電車の中で、そういうことします?」と問いたくなるような行動、思わず二度見してしまう行動をする人たちも、中にはいる。 電車内にはどんなモンスターがはびこっているのだろうか。多様な人が集まる場には、多様なモンスターが存在する。 筆者は、これまでダイヤモンド・オンラインで、「モンスター◯◯」を度々取り上げ、実録として紹介してきた。今回は、「モンスター乗客」の事例を20~40代男女に聞いて集めてみた。こんなモンスター乗客を目にしたことはないだろうか。
電車内で歯磨きを始めた……思いがけない行動に出る乗客
まずは、モンスター度・初級(「筆者が集めたエピソードの中では比較的軽度であり、初級と分類してみた」と補足しておく)の事例から見ていきたい。
「よく見る光景かもしれませんが、電車の中で脚をドーンと広げて座る男性、多いですよね……。あれ、すごく迷惑じゃないですか?めちゃくちゃ空いてる電車ならまだしも、混んでいるのに脚を閉じない男性もいます。 隣に座るのも窮屈ですし、その人の前に立つのも、スペースがなくてしんどい。あの人たちは想像力がないんでしょうか。周りが狭そうにしていても、まったく気にしない態度にイラッとします」(20代男性) 脚を広げて座るのは迷惑行為の一つ。ただ、見慣れすぎて、「ああ、そういう非常識な人なのね」と感じて終わることも少なくない。とはいえ、注意して逆ギレされるのも癪(しゃく)だし、関わらないでおこう……とするのが、よくある対応ではないだろうか。
「中年男性に多いのですが、大きなくしゃみを手で押さえずに連発する人。くしゃみの飛沫は数メートル飛び散るという話を聞いてから、神経質にならずに要られません。生理現象なのでしょうがないですが、控えめにしようとすれば加減できるものですし、せめて手で押さえて……」(30代女性)
咳(せき)やくしゃみは生理現象だが、周囲からすれば気持ちのいいものではない。止まらないときには手で押さえる、マスクを着けるなど対処するのがマナーだろう。「優先席の前に立っていたときのことです。目の前に座る40代くらいの女性が、携帯歯ブラシセットを取り出して、いきなり歯を磨き始めて『えっ!?』となりました。歯磨き粉は付けていなくて、自分の唾液だけで磨いていたようです。 電車内で歯磨きをする人を見るのは初めてで、どうしても目を離せずにいると、その人は歯ブラシを口から抜いてケースにしまい、今度は鏡を出して口を“イー”として、歯をチェックし始めました。歯磨きのツバは当然飲み込んだようで……驚きしかなかったです」(30代女性) 歯磨きというと水道が欠かせない気もするが、水がなくても歯を磨きだす人がいるのだと驚く。この手の人は、自分がどう見られているかを気にする以前に、自分が心地よくなるために行動する、という発想なのだろう。実害はないから「初級」に分類しておいた。
牛丼、ハンバーガーを食べ始める強烈なニオイを撒き散らす乗客
続いて、モンスター度・中級(筆者独自の判断)の事例を見ていこう。
「昼下がりの電車で、牛丼屋の包みを取り出して、牛丼を食べ始めた男性がいました。車内では『何このニオイ?』とキョロキョロする人が続出。 電車内の飲食を推奨するつもりはありませんが、ニオイのしないものなら食べてもいいと思います。忙しい人もいますし、おなかがすいちゃう人もいるでしょうし。でも、さすがに牛丼のようなニオイのキツいものを密室で食べるのはどうなのか」(30代男性) 牛丼からは食欲をそそるニオイが香り立つ。それが車内に広まると、空腹な人はたまらない気持ちになり、そうでない人は困惑する。刺激が強い食べ物は避けてほしい、というのが多くの人の願うところだろう。「以前、ファストフード店のハンバーガーとポテトを食べている若い女性に遭遇したことがあります。ニオイがすごいですね……。お店で食べているならなんともないんですけど、普段電車の中で脂っぽいニオイ、しないじゃないですか。だから違和感がありました。 特急や新幹線を除く、普通の通勤電車で食事をするのは、正直ないな……と思いますが、ニオイのないものならまだ許せます。でも、強烈なニオイを放ったり、脂っぽさが充満したりするものは食べないでほしいですね。迷惑です」(40代女性) こちらは牛丼とはまた一味違う、脂っぽいニオイだ。好きな人は好きだし、嫌いな人は嫌いなニオイ。飲食禁止かどうかは電車の事業者によって異なるが、周りを不快にしないための配慮は必要だろう。
鼻くそをほじる、舌打ちする近くにいるだけで厄介な乗客
さらにモンスター度・中級の事例を続ける。
「最近、電車の中で鼻くそをほじる男性を多く見かけます。私の見る限りではありますが、男性しか見たことがないですね。男性といっても、若い人からオジサンまでいろいろで、ほじった指をどうするかも人によりけりです。 指ではじいて前に飛ばす人、なめて食べる人、椅子になすりつける人……見ているだけで不快です。そういう人を見たときは危険を回避したいので、さり気なく移動するようにしています。そういう人は意外と多いので、注意したほうがいいと思います」(30代女性) 筆者も鼻くそをほじる人を電車内で何度も目撃したことがある。いきなり指を鼻に突っ込み、大胆に回した後の行動が毎回怖い。飛ばされやしないかと不安になる。それで服が汚れるのも不愉快だ。せめてティッシュを使うなど、周りに迷惑をかけないような動きをしてほしい。「ギュウギュウの電車に乗り込んだところ、目の前に立っていたサラリーマンに舌打ちされました。思いっきりぶつかったわけでも、何か危害を加えたわけでもありません。ただ、密着しているので、サラリーマンには『狭い』『窮屈だ』と感じられたのかと。 それでも次の駅に着くまでずっと、チッと舌打ちされ続けて、怖い顔でにらみつけられて、かなり嫌な思いをしました。満員電車で人と人との距離が近くなるのは仕方ないし、それならタクシーか自分のクルマで通勤しろよと思うんですけど」(40代男性) 普段、舌打ちをされる機会はそれほどない。だからこそ、されるとびっくりするし、とても悪いことをしたような気持ちになる。ある程度密着してしまうのはお互いさま、ともう少し広い心を持てないものだろうか。
殴る蹴るした後、電車に戻ってくるムカつく相手を暴力で押さえつける乗客
最後は、モンスター度・上級(筆者独自の判断)の事例で締めたい。
「まあまあ混んでいた午後6時台の通勤電車内でバトルが起きました。大学生風の若い男の子と40代くらいの見た目普通な男性サラリーマンです。若者が肩にかけた鞄(かばん)がサラリーマンの体に当たって、それに対して怒ったようでした。 サラリーマンが体に当たる鞄を払うようなしぐさをして、若者をじっとにらみつけていて、若者もそれに応じるようにガンを飛ばしていて……。バチバチな雰囲気になって、何かが始まるかと思ったところで、若者が『うぜぇんだよ』と挑発。 サラリーマンは無言で若者をにらみ続けて、次の駅で2人は降りました。サラリーマンが若者を引きずり出したように見えましたね。ホームで殴り合いが始まるかと思ったら、サラリーマンが3~4発若者を殴る蹴るした後、ドアが閉まる直前に1人だけ電車に乗り込んできたんです。 明らかに、キレやすくて暴力的な人ですよね……。周りはさーっと引いていて、サラリーマンの周りだけ妙に空いていました」(30代女性) これはもはや、暴行事件だ。見た目が普通のサラリーマンだったというだけに、その豹変っぷりが逆に恐ろしい。電車内で他人の鞄が自分の体に押し付けられたり、ゴツンと当たったりするのは、混んでいれば仕方のないこと。それでもキレる人がいるというのは、なんとも恐ろしい事実だが、頭の片隅に置いておきたい。
モンスター乗客を回避するために私たちができること
移動手段の1つとして電車を使う私たちが、モンスター乗客を完全に避けるのは難しい。たまたま乗り合わせた電車に、たまたまモンスター乗客がいた、なんてこともあるからだ。 彼らとの間でトラブルが起きないようにするには、モンスター乗客だと察知したら距離を置くこと、関わらないようにすること。それしか方法はない。 逆に正義感を持って果敢に立ち向かおうとしても、良くないことに巻き込まれる可能性もある。もちろん、誰かが困っていたら助けるのは良いことだが、その場の状況を見て判断し、駅員などを呼ぶのも賢い選択だ。 安心安全な電車通勤生活を送りたいものである。