電通が早期退職を募る狙い

広告代理店大手の電通。テレビ媒体などの仕入れで2位以下を圧倒する国内広告業界の絶対的存在だ。その電通が人員削減策を打ち出した。
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 電通は12月7日、100人の早期退職者を募集すると発表した。対象者は2013年3月末時点で勤続10年以上、40~59歳までの正社員。社員約6200人のうち、半数の約3000人が対象となる。前回、6年前に実施した早期退職者募集では「勤続15年以上の45歳以上」「勤続20年以上の45歳未満」だったため、対象者の年齢は若干ながら低下、枠は広がったことになる。
■ 業績への影響は軽微
 前回は100人の募集に対し、定年間近の50代後半中心に58人の応募があった。2007年3月期決算で加算退職金の特別損失14億円を計上。その後2年間で約18億円の人件費削減効果はあったものの、営業利益で500億円超、純利益300億円規模の当社にとって、業績に与える影響は軽微といっていいレベルだ。
 ではなぜ、早期退職者を募るのか。背景にはビジネス構造の変化がある。
 売上高の約5割を占める収益柱のテレビ媒体広告は、若者のテレビ視聴時間の減少に伴い、将来的な成長は見込めない。そのため、従来型のマス中心の広告ではなく、成長分野であるデジタル領域に経営資源をシフトさせている。
 また今期中に予定している、世界80カ国に拠点を持つ英国の広告会社イージスグループ買収によって、海外売上高は約1割から4割に拡大。来期は、グローバル化が一気に進み、デジタル領域に強いイージスとのシナジーを追求することで、「ビジネス構造の変化によってもたらされる節目の年になる」(電通経営企画局)。
 電通の進化を牽引するような働く意欲がある人々に活躍してもらうため、貢献度を報酬に反映するように人事評価制度も前期から今期にかけて変化させてきた。さらに今回の早期退職者募集によって、変化に柔軟に対応できる、より多くの若い世代に活躍の場を与える方針のようだ。

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