1950年代にオランダから日本に持ち込まれ、岩手県内でも養殖試験が行われていたヨーロッパ原産のカキ、「ヨーロッパヒラガキ」。
東日本大震災の津波で流失したため、国内では完全に消滅したと思われていたカキの生息が確認されました。
「7.8年くらいの個体だと思います」
去年4月、岩手県山田町の漁業者がこの貝の写真を「これはなんだ?」というコメント共にSNS上に投稿しました。
その投稿に岩手県水産技術センターの職員がいち早く気づきました。
岩手県水産技術センター増養殖部 小林俊将部長「間違いなく(マガキ)とは違うものだと写真だけでわかってそれから、興味を持って調べだしたというのが今回の取り組みの発端」
寺本沙也加研究員
「こちらがヨーロッパヒラガキの成貝になりますね。全部山田湾で採れたものです」
山田湾で養殖されている真ガキに付着する形で見つかったこちらのカキ。山田湾で得られた10個のカキをDNA解析したところ「ヨーロッパヒラガキ」というヨーロッパ原産の食用ガキであることがわかりました。
「ヨーロッパヒラガキ」はヨーロッパでは高級レストランで提供されています。
1952年、養殖目的でオランダから日本に持ち込まれ、岩手県沿岸でも90年代に山田湾で養殖試験が行われていました。その後も続けていた宮城県でも2011年の東日本大震災の津波で流され、国内では消滅したとみられていました。
寺本研究員
「これが去年試験的に作ったヨーロッパヒラガキの種苗になります。これは去年の9月に養成を開始したもので1年経たないくらい」
岩手県水産技術センターでは岩手県内24の漁協に聞き取りをした結果、宮古市から陸前高田市までの7つの湾で生息しているのが確認されました。センターでは、去年から種苗生産試験を開始、ことしの秋以降、県内の漁業者に提供して試験養殖を行い事業化が可能か検討していきます。
岩手県水産技術センター小林俊将部長
「外来種という事もあるので、そういった環境への影響も配慮しながら進めなくちゃいけないなということがあって、むやみに大規模にやるというよりは少しずつ養殖試験をやった方がいいんじゃないかと考えています」
このヨーロッパヒラガキは高い水温への耐性が高いということで、海水温の上昇で不安定な県内の漁業を救う一端になるのか、今後の取り組みが注目されます。