震災伝承、オンラインに活路 コロナ禍で仙台市職員勉強会が試行

新型コロナウイルス禍でも東日本大震災の体験や教訓を語り継ごうと、仙台市職員の自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」が、オンライン伝承に力を入れている。震災対応に当たった職員が対面で語るスタイルに比べ、迫力は劣るものの、場所を問わず参加できる手軽さがあり、伝承と感染防止を両立する手法として期待する。

 チーム仙台が24日夕に開いた「3.11オンライン伝承会」。ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を通して15人がつながり、震災発生時は若林消防署の消防士だった佐久間耕一さん(60)の話に聞き入った。
 佐久間さんは市民活動サポートセンター(青葉区)の会議室から参加。津波にのまれた沿岸部の壮絶な現場と、人命救助に全力を尽くした発生直後の対応をパソコンに向かって話した。
 「阪神・淡路大震災の現場を踏んで『もしも大地震が起きたらどうするか』と自分なりに考えていた経験が生きた」と振り返り、オンライン伝承会などで対話を重ねることも経験の一つになると意義を強調した。
 チーム仙台は東北大や常葉(とこは)大(静岡県)などと共同で、市職員の震災体験を聞き取り、記録に残す「災害エスノグラフィー調査」に取り組む。聞き取った体験の朗読や本人による語りなどを通じ、震災後に入庁した職員への伝承も進める。
 だが、新型コロナの感染が広がり、今年1月以降は活動がストップ。3月に予定していた一般参加も可能な震災の教訓伝承イベント「あれから9年スペシャル」も延期を強いられた。
 突破口となったのがオンライン伝承会。今後も月1、2回ずつ実施し、11月7日はオンライン版の「あれから9年スペシャル」を開催する。感染の収束が見通せない中、震災10年の節目に計画する「10年スペシャル」の試行を兼ねる。
 チーム仙台発起人の鈴木由美さん(58)は「コロナ禍であっても震災伝承を止めるわけにはいかない。音質の問題などオンラインには課題もあるが、スマートフォンで手軽に参加できる利点がある。効果的な伝え方を模索し、10年の節目につなげたい」と語った。

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