震災伝承、ソフト面進まず 石巻市の産学官民支援組織、準備停滞 市民から不満の声

宮城県石巻市が東日本大震災の伝承活動推進に向けて設立する産学官民連携の中間支援組織の準備が始まらず、地域間連携や人材育成などソフト面の議論が置き去りにされている。2017年6月に策定した市震災伝承計画で設置が明記され、17年度中に組織の在り方などの検討を始める予定だった。計画策定に関わった市民からは「せっかく話し合ったことが生かされていない」と不満の声が上がる。

震災伝承計画によると、中間支援組織は学術研究機関や地域住民、NPO、行政などの連携を想定。伝承活動を持続的に支える専門性を持った組織と位置付ける。具体的な活動内容や組織の形態などは今後の検討課題とした。
スケジュール案では18~19年度に組織を設立し、20年度以降は産学官民が連携して伝承活動や人材確保・育成に取り組む計画だった。17年度中に開催するはずだった組織づくりの協議がまだ始まらず、先行きに不透明感が漂っている。
市震災伝承推進室の今野照夫室長は「昨年度は遺構の基本設計の発注や慰霊碑の整備で手いっぱいだった。本年度中に意見交換の場を設けたい」と釈明する。
震災伝承計画を巡っては市が16年度、語り部や郷土史家、大学教授ら16人で構成する検討会議を設置。5回の会合で伝承の理念や中間支援組織の在り方を話し合い、意見を基に市は計画を策定した。
石巻市内では震災遺構の旧門脇小が19年度中、旧大川小が20年度中にそれぞれ整備を終える見通し。国と県、市が関わる石巻南浜津波復興祈念公園も20年度中の整備を予定し、施設間の連携などソフト面の課題は山積する。
旧門脇小が被災した当時の校長で、震災伝承計画の検討会議に参加した鈴木洋子さん(67)は「いつ組織が立ち上がるのかと期待して待っているが、話が進んでいない。ハードを整備する市の苦労も分かるが、次代に伝えるには創造的に知恵を出し合える中間支援組織が必要だ」と指摘する。

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