震災伝承・啓発の拠点組織 宮城県が設立検討

東日本大震災の伝承と防災啓発を強化するため、宮城県は新年度、持続的な発信を担う拠点組織の設立に向けた検討に入る。阪神大震災など大災害の被災地では専門の公的機関が活発な活動を展開しており、同様の組織の必要性が指摘されてきた。震災から6年が経過し風化が懸念される中、記録・記憶の保存や活用、人材育成などに産学官民連携で幅広く取り組めるよう、統合的機能を果たせる組織の姿を模索する。
大災害関連の組織としては、阪神大震災のひょうご震災記念21世紀研究機構(神戸市)と新潟県中越地震の中越防災安全推進機構(長岡市)が知られる。
ひょうご機構は震災2年後に発足した兵庫県の記念組織やシンクタンクなどを統合し2006年に発足した。中越機構は大学や高専などの連携組織を母体に発災2年後、同じ06年に設立された。共に公益法人。
ひょうごは兵庫県主導で調査研究色が濃く、中越は研究機関と民間組織の協働を基盤とするなど性格も体制も異なるが、それぞれ人と防災未来センター、中越メモリアル回廊などの伝承や調査機関、施設を運営。視察の受け入れや人材育成、新たな被災地向けの教訓伝承や支援、世界への発信の役割を担っている。
同様の専門組織の必要性を巡っては、産学官民、報道機関など70団体の有志が参加する連携組織「みやぎ防災・減災円卓会議」が12日、仙台防災未来フォーラム2017の場で「宮城県や仙台市、被災自治体を中心に関係団体が足並みをそろえ、設立に向けて行動を起こすことを求める」とのアピールを発表した。
円卓会議は「宮城では個々の取り組みは活発だが、統合した窓口が見当たらず、受発信が分散している。阪神や中越のようにそれらをまとめ、つないで発信を強化できる組織が不可欠」として、ネットワークの中核を担える組織の必要性を提言している。
宮城県は新年度予算に拠点組織関連の調査費を計上しており、有識者や専門家を交えて検討を始め、組織の役割や規模、財源などを精査する。早ければ19年度設立のスケジュールを念頭に、1年程度の検討を経た上で早期の準備組織立ち上げを目指す。

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