東日本大震災の被災地の仮設住宅入居者らを支援する仙台市若林区の官民連携グループ「六郷・七郷コミネット」が、地域誌「ふたつの郷(さと)」を発刊した。「昔を語る会」に参加したお年寄りの声を収録。六郷、七郷両地域の震災以前の暮らしぶりを、住民自らが語るスタイルで紹介している。
語る会は2012年6月から13年11月まで、仮設住宅などで19回開かれた。参加者はNPO法人「20世紀アーカイブ仙台」や若林区が保有する昭和30~50年代の古里の写真、映像を見ながら振り返った。
地域誌は語る会の狙いと同様、個人の記憶を通じ、被災した地域の生活や文化を浮かび上がらせる役割も担う。
荒浜(七郷地域)の住民対象の集まりからは、会話が盛り上がった学区民運動会などについて掲載。「練習段階から町内会単位で競い合った」「地区単位でユニホームを準備したんだ」などと当時の熱気が伝わる。「新設団地の住民はなかなか参加してくれなくて…」ともどかしさがあったことも分かる。
仙台弁のニュアンスを生かすため、原則として住民の話し言葉をそのまま記載した。簡易な仙台弁の解説ページも設けた。
六郷・七郷コミネットの菊地守会長(43)は「薄れつつある郷土の歴史や風習に思いをはせてもらうとともに、新たな地域をつくる手掛かりを見いだしてほしい」と期待している。
A4判、90ページ。500部発行し、18日から若林区役所などで販売する。1000円(税別)。連絡先は同区まちづくり推進課022(282)1111。