震災前の営み伝える 小冊子シリーズ刊行 東北芸工大

 東日本大震災の被災地再生には、震災以前に脈々と息づいていた暮らしの営みからの視点も大切だと、東北芸術工科大(山形市)は、小冊子「むらの記憶」をシリーズ化する取り組みを始めた。第1弾として、宮城県気仙沼市小々汐(ここしお)集落に光を当てた「小々汐仁屋(にんや)の年中行事」を刊行した。
 小々汐集落は、気仙沼湾に面した藩制時代から続く漁村。震災の津波で壊滅的被害を受けた。仁屋は、同集落に暮らす家々の分家の一つだ。
 東北芸工大の東北文化研究センター共同研究員で、リアス・アーク美術館(気仙沼市)元副館長の川島秀一氏が、1980年代から小々汐集落の営みを写真撮影するなどしてきた。こうした経緯から、「むらの記憶」シリーズの第1弾は小々汐を舞台とした。
 「小々汐仁屋の年中行事」はB5判、56ページ。集落で受け継がれてきた行事を季節ごとに伝える。「新たな年を迎える」の章では、門松に相当する「オシノグイ」などを紹介。正月2日に行う漁船の乗り初め儀礼を、文章に写真と図を添えて分かりやすく解説してある。
 東北文化研究センターは4月上旬、担当者が気仙沼市役所を訪れ、冊子を市に寄贈した。同センターは「震災以前に営まれていた生活の記憶や、先祖から継いできた土地に寄せる思いは、再生の足元を照らす道明かりとなるはず」と話している。
 今後は東北芸工大の教員や研究生らが取材・執筆に当たり、年に2回程度の刊行を目指していくという。「小々汐仁屋の年中行事」の入手希望などの連絡先は、東北文化研究センター023(627)2168。

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