東日本大震災で親を亡くした子どもたちの支援に役立ててほしいと、石川県羽咋(はくい)市の金属加工会社経営、平美都江さん(55)が東北大に1億2000万円の寄付を申し出た。「被災しなかった一人として、応分の負担をしたい」と、ことしから10年間、毎年1200万円を寄付する。東北大は平さんの寄付を基に専門家を雇い、震災孤児や遺児の支援に取り組む。
東北大は同大大学院教育学研究科内に「震災子ども支援室」を設置。年明けから臨床発達心理士ら相談員2人が常駐する。主に宮城、岩手両県の孤児と里親、遺児とその一人親らの相談に応じる。運営資金は平さんの寄付で賄う。
平さんが経営する会社はベアリングの外輪などを製造。震災による直接の被害はなく、東北に親類や知人がいるわけでもない。それでもずっと、被災地の状況を伝える報道に心を痛めていた。
特に気になったのは、親を亡くした子どもの将来だ。文部科学省によると、9月末現在、震災で両親を失った孤児は宮城123人、岩手93人、福島21人。両親のいずれかを亡くした遺児は宮城712人、岩手472人、福島139人に上る。
平さんは一時、孤児を引き取ることも考えたが、多忙な社長業との両立は難しいと断念。悩んだ末、「自分に痛みを伴うような金額を寄付して、公的な機関に生かしてもらおう」と決めた。
当初、寄付の意思を伝えた宮城県や仙台市には「目的を特定した寄付は受け取れない」などと断られた。「地域の大学ならば」と連絡した東北大が受け入れ先となった。
10年の支援を続けるのは、被災地に継続して関わろうとの覚悟からだ。既にことし分の1200万円を振り込んだ。
平さんは「円高の影響で中小企業の経営は楽ではないが、1回お金を送って終わりにしたくなかった。子どもたちのためにも、頑張って利益を出していきたい」と声を弾ませる。
12日には、初めて東北を訪れ、東北大川内キャンパスで予定される子ども支援室の開設セレモニーに出席する。平さんは「親を亡くした子どもたちが困った時、助けてくれる拠点になるよう、見守り続けたい」と話している。