青い目玉のお守り「ナザールボンジュウ」が仙台で売れている 12年前と重なる思い

 仙台で今「ナザールボンジュウ」が売れているそうです。ほとんどの人は「?」が浮かんだのではないでしょうか。トルコのお守りで、青い目玉の形をしています。2月6日に起きたトルコ・シリア大地震による被害を見聞きし、12年前の東日本大震災を重ね合わせる人が多いのかもしれません。「何もできないけれど…」。そう言って買い求める人が後を絶たないそうです。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

直径3センチほど

 大地震から3週間となった2月27日、仙台市青葉区の錦ケ丘ヒルサイドモールにあるトルコ雑貨店「イスタンブールバザール」を訪ねました。伝統のじゅうたんやモザイクランプ、陶器といった手工芸品に交じり、ナザールボンジュウが並んでいました。直径3センチほどのガラス製で、青色、水色、白色の円を重ねた目玉が描かれています。

 店主のゼキ・ヒシャンさん(56)は「ちょっと気味悪く見えるかもしれないけど、トルコ人はみんな身に着けたり、部屋や車、バッグにつるしたりしています」と紹介してくれました。

 トルコには、他人の嫉妬など悪意を持った視線「邪視」によって災いが降りかかるという民間信仰があります。ナザールボンジュウは邪視をはね返すと信じられているそうです。

 ゼキさんは31年前に日本に来ました。サクランボの生産が盛んな山形県寒河江市と、サクランボの原産地とされるトルコ北部ギレスン市が姉妹都市締結しているのが縁で、寒河江市に移り住みました。その後、山形市七日町で23年間、雑貨店を営み、2021年8月、錦ケ丘に移りました。

 ゼキさんは2月3日、トルコでの商品の買い付けを終えて日本に戻りました。そのわずか3日後、大地震が母国を襲いました。兄弟や親戚は無事でしたが、甚大な被害を伝えるニュースを見て胸を痛めています。

 「多くの人が亡くなり、生き残った人も生活や仕事、全てを失っています。いてもたってもいられないけど、どうすることもできない」と沈痛な表情を浮かべます。

 初めは寄付を呼びかけるのをためらっていましたが、日本人の知人が「置かなきゃ駄目だ」と自主的に募金箱を作ってレジ前に置いてくれたといいます。

 「大地震の後、店を訪れる人が目に見えて増えました。皆さん『大丈夫ですか』などと気にかけてくれます」。そして、客の多くが「青い目玉のお守り」を買って帰るのだそうです。

初来店の人増える

 同じことは2016年にオープンした仙台市青葉区二日町の「仙台トルコ雑貨店」でも起きていました。

 経営するキヤデザイン合同会社の成川秀子代表も年数回、現地の工房や市場を巡り商品を仕入れています。「トルコの人はフレンドリーで、親切で、情に厚い。これまでに出会った人たちの顔が浮かび、胸が締め付けられる思いです」と話します。

 やはり大地震の後は、通りすがりなどで初めて店を訪れる人が増えていて、成川さんは日本とトルコの長年にわたる友好関係や工芸品の魅力を伝えるようにしているといいます。

〔日本とトルコの友好の歴史〕
◆1890年、オスマン帝国(現トルコ)の軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で沈没、遭難した乗組員を地元住民が救助した。
◆1985年、イラン・イラク戦争でイランに取り残されていた在留邦人215人を、トルコ航空の2機が救出した。
◆1999年、トルコ北西部地震で1万7千人以上が死亡。日本は大規模な支援活動を展開した。
◆2011年、東日本大震災でトルコの救助チームは諸外国で最長の約3週間、宮城県内で活動を続けた。

「気持ちは一つ」

 成川さんはナザールボンジュウを求める人の心情を「仙台の方は震災の記憶が強く残っていて、特に人ごとと思えないのかもしれません。アジアの両端で遠く離れているけど気持ちは一つでいるよ、という思いや祈りをお守りに込めているのではないでしょうか」と想像します。

 「イスタンブールバザール」と「仙台トルコ雑貨店」は募金箱への寄付金や、売り上げの一部を在日トルコ大使館を通じてトルコ災害緊急事態対策庁に贈り、救援活動や復興支援に役立ててもらう考えです。

〔トルコ・シリア大地震〕
 2月6日現地時間午前4時17分(日本時間同10時17分)、トルコ南部カフラマンマラシュを震源とする大地震が発生した。地震の規模を示すマグニチュードは7・8。被害は隣国のシリアにも及び、両国を合わせた死者は23日までに5万人を超えた。

 内閣府の防災白書(2022年版)の集計に基づくと、自然災害でこれほどの犠牲者が出たのは2011年の東日本大震災以来。今世紀に世界で起きた6番目の規模となった。
▽2004年、インドネシア・スマトラ沖地震(死者・行方不明者22万6000人以上)
▽2010年、ハイチ地震(同22万2600人)
▽2008年、ミャンマーでのサイクロン(同13万8400人)
▽2008年、中国・四川地震(同8万7500人)
▽2005年、パキスタン地震(同7万5000人)

 東日本大震災は死者1万5900人、行方不明者2523人(警察庁などまとめ)、関連死3786人(河北新報社調べ)。

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