青木隆治に荒牧陽子 カラオケものまね全盛のワケ

昨年ブレイクした青木隆治に続き、今年も1人のものまねタレントがブレイクした。夏ごろから徐々に頭角を現した荒牧陽子である。2人に共通するのは、共に歌手を目指していたという点とものまねをする以前はものまねを軽視していたという点である。しかしそんな2人も、それぞれにきっかけを得てものまねの素晴らしさを知る。2人はどんな形であったとしても自分の歌を聞いた人々が癒されるならと、ものまねタレントとして歩むことになった。
 そんな青木も、昨年のブレイク時には毎日のようにテレビに出演していたが、ここのところメディアでの露出はめっきり少なくなっている。よく、芸能界について一寸先は闇なんてことが言われるが、すでに青木もその闇に呑まれたということだろうか。
「最近青木さんをテレビで見ないのは、昨年、彼を売り出す前に決まっていたことではないでしょうか。つまり、事務所としては、一定期間目一杯露出させ、ある程度の知名度を得た後、コンサートやイベントで稼ごうという作戦だと思います。それは、ものまねという彼の芸が、テレビに出すぎると見飽きてしまうという性質を持っているからでしょう。そうなる前にテレビでの露出を止め、視聴者に彼の歌声だけを印象付けておくというのが、より集客をのぞめるというわけです」(業界関係者)
 さらにこの関係者はこんなことを言っていた。
「去年、青木さんがテレビで注目されていたころのギャラですが、通常のタレントより割安だったと思います。売り出し中なわけですから当然といえば当然ですが、ブレイク後のテレビ出演料もそこまで高くはならなかったんじゃないですかね。事務所とすればなによりも知名度が欲しかったわけですから。ある程度メジャーになれば、その後の計算が成り立つということでしょう。今年の夏ごろからテレビに出ている荒牧さんも同じようになると思います。彼らのようなものまねタレントというのは、普通のタレントとは違って、金銭的に本物は呼べないけどというイベントやライブではめっぽう重宝されますからね。そういった方向で芸能活動を続けていくというのは規定路線なのだと思います」(前出)
 ものまね芸人の先駆者といえばコロッケの名前が浮かぶ。毎年開かれる彼のディナーショーは即日完売の盛況ぶりを見せるという。またノブ&フッキーが全国各地で営業をこなしているのは有名な話だし、清水アキラが箱根の温泉宿での歌謡ショーを年俸約1億円で契約したことは多くの人が知っているだろう。ものまね芸人といえば、やはり営業というのが定番のようである。しかし、ここに列挙したような大御所ものまね芸人と青木や荒牧はどこか違うような気がする。
 それは、コロッケや清水アキラはものまね芸人と呼べるのに対し、青木や荒牧をものまね芸人と呼ぶとなぜか違和感が生まれるという点からくるのではないだろうか。むしろ、青木や荒牧にはカラオケものまね師という呼称がしっくりくる。別にどちらに優劣があるというわけではないが、コロッケや清水アキラはものまねを通して、原曲のイメージを崩しながら自らの世界を作り芸を披露する一方で、青木や荒牧は、その歌唱力で原曲を再現することに精を出す。どちらも一般人には真似のできない芸当であるが、原曲そのものの魅力を押し出す青木や荒牧はカラオケ的といえるだろう。
 ものまねのものまねは意外とすんなりできるものだったりする。コロッケの見せる美川憲一をものまねするのは案外容易いということだ。だがそれはあくまでもコロッケのやる美川に過ぎない。しかし、より原曲のイメージに近いことをモットーとする青木や荒巻のものまねは、2人の真似を試みたとしても、決して2人の真似だと思われることはないだろう。つまり、彼らのものまねは原曲と視聴者の間に立っている。そんな2人のものまねは、より視聴者に原曲を近づけさせる効果を持つといえるのかもしれない。
 青木や荒牧の歌声をヒントにマイクを握った読者も多いのではないだろうか。彼らの人気の秘密は、芸というより、そういった模倣性にあるように思う。そして、そんな彼らを見ていると、近年メディアで大活躍の読者モデルという存在を思い出す。彼女たちもまた2人と同じように、通常のモデルと違って一般人が真似をできるという点で人気を博しているといえる。近頃の視聴者には、飛びぬけた芸や抜群の容姿よりも、手の届きそうで届かないという微妙な存在が受けるのかもしれない。
(文=峯尾)

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