韓台勢、ケータイ大攻勢 スマートフォン「参入の壁」下げる

携帯電話市場で、韓国や台湾などアジア勢の存在感が高まっている。4月にソフトバンクモバイルから発売された台湾HTC製のスマートフォン(高機能携帯電話)が品薄状態となっているほか、世界で人気機種となっている韓国サムスン電子のスマートフォンが10月をめどにNTTドコモから発売され、その販売動向に注目が集まっている。韓国などアジア勢の携帯電話端末は世界ではトップグループに入っているものの、日本ではこれまで認知度が低く劣勢を強いられていた。しかし、スマートフォンブームをテコに市場に浸透することも予想され、日本メーカーにも反撃態勢が求められている。
 「スマートフォンの市場シェア拡大に向けた原動力になる」
 ドコモ幹部は、10月にも発売予定のサムスンのスマートフォン「ギャラクシーS」に期待を込める。ギャラクシーSは今春から欧米やアジア諸国などで発売された。外観は米アップルの人気スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」と似ているが、操作性やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)との連携などで「アイフォーンよりも使いやすい」との評判もあり、各国で好調な売れ行きを示した。
 この人気ぶりをみて、スマートフォンではソフトバンクのアイフォーンなどに後れをとっているドコモが巻き返しのために販売を決めた。
 アップルのアイフォーンに次いで日本のスマートフォン市場で存在感を示したのが台湾のHTCだ。4月にソフトバンクが「ディザイア」を発売したところ、「品薄状態が続いた」(ソフトバンク広報)。これに伴い、ソフトバンクは今後もHTCやサムスンなどアジア勢の端末供給を強化する見通しだ。
 そのサムスンは世界2位の携帯電話メーカーだが、日本市場ではベスト10にも入れず、苦戦を強いられている。その要因についてMM総研の横田英明アナリストは「家電などで『サムスン=壊れやすい』など悪いイメージが日本の消費者に浸透しているため」と指摘する。
 しかも、国内の携帯市場はドコモのネットサービス「iモード」など独自の仕様が多く、これが海外メーカーにとって参入障壁となっていた。
 その障壁を崩しそうなのがスマートフォンだ。日本独特の仕様もなく、いわば“世界標準”の機能で戦える。加えて、日本メーカーのスマートフォン対応端末の開発が遅れたこともあり「日本市場へのハードルが一気に下がった」(横田氏)。
 実際、サムスンの幹部も「日本でもアイフォーン人気が盛り上がり、海外メーカーでも良いものを適切なタイミングで売れば受け入れられるという確信を得た。風向きは変わっている」と日本市場開拓に自信をみせる。韓国メーカーではLG電子も、ドコモ向けなどに新端末の投入を強化している。
 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2009年度の国内携帯電話の出荷台数(PHS含む)は前年度比12.3%減と2年連続で減少するなど縮小傾向が続いている。07年に総務省が携帯各社に大幅な値引き販売を改めるよう指導したことで端末価格が上昇し、買い替え需要が後退したためだ。
 一方で、日本では次世代無線通信など世界に先駆けた技術インフラが進展している。これが海外メーカーにとっては「日本市場での技術ノウハウを海外市場で転用できる」(同)ことも参入意欲を高めそうだ。
 世界的にシェア競争が激化する携帯電話市場をめぐっては、韓国メーカーなどが採算が悪化している中位以下のメーカーを買収するなどで一気にシェアを拡大させる動きも予想されている。“ガラパゴス”の環境下にあった日本メーカーにとって、世界で経験値を上げてきたアジアメーカーとの厳しい戦いが幕を開ける。(三塚聖平)

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