沖縄県・尖閣諸島や島根県・竹島をめぐる中国、韓国との対立の余波が、関西の旅行会社へも及んできた。ツアーの予約が前年同期に比べ3~4割減に落ち込んだほか、新聞広告を見合わせるなど影響が深刻化しつつある。中国、韓国は日本人旅行者の渡航先ベスト3に入るだけに、旅行会社のダメージは大きく、両国以外のツアーを拡充する動きも出ている。
日本旅行では、尖閣諸島や竹島問題が再燃した8月下旬以降、中国や韓国の個人パック旅行のキャンセルが相次いだ。関西発着分の9~10月の予約は韓国が前年同期比4割減、中国も同3割減と厳しく、同社は「何らかのてこ入れが必要だ」と頭を抱える。
阪急交通社も「(中韓の)治安は大丈夫なのか」といった店頭での問い合わせが増えており、8月下旬から中国、韓国方面ツアーの新聞広告を見合わせた。こうした影響は「少なくとも1カ月続く」(担当者)とみて、関西国際空港からの所要時間が韓国・ソウルに近い沖縄や台湾のツアー拡充を急いでいる。
今回の問題で、旅行会社が懸念を強めるのは修学旅行への影響だ。
修学旅行の行き先に韓国、中国を選ぶ学校は私立を中心に少なくない。近畿日本ツーリストでは「ぎりぎりまで様子を見て判断する学校が多い」(担当者)と話すが、関係悪化が続くと“中韓外し”が進む可能性もある。 首都圏よりもアジアに近い関西は投資や貿易で中国や韓国との結びつきを強めてきた。それだけに現時点で旅行業界以外では、大きな影響は出ていない。ただ、中国や韓国で事業を展開するアパレル企業の関係者は「社外で大声で会話しないよう注意している」と明かすなど、問題の行方をめぐり産業界も慎重な対応を迫られている。