韓国「抗日旗」問題 海自OBは呆れ顔で「軍人の独断でやれることではない」 

朝日新聞も「非常識」のコメントを報道

例えば読売新聞の電子版は13日、「韓国艦艇、観艦式で李舜臣将軍を象徴する旗掲揚」と報じた。こうなると、もう怒りは感じない。ただ呆れるだけだ。それにしてもなぜ、韓国は騙し討ちに等しい“反則技”に踏み切ったのか。

***

経緯は意外と複雑だ。発端は9月。朝鮮日報なら6日、《済州で行われる韓国海軍の国際観艦式に、日本の海上自衛隊の艦艇が「旭日昇天旗」を掲げて参加することが分かり、論議を呼んでいる》と報じた(「旭日旗掲げた日本の艦艇、済州の国際観艦式に参加へ」)。

日本のメディアも続く。朝日新聞を例にとろう。9月28日に「韓国観艦式で旭日旗使わないよう要請 防衛省関係者『非常識』」の記事を掲載した。

1800年代に使用された「英雄の旗/抗日旗」(U. S. Naval Academy/Wikimedia Commons)

《韓国海軍の報道官は27日、済州島で10月10~14日に他国の海軍との交流などを目的に開く「国際観艦式」に関し、日本などの参加国に「自国の国旗と太極旗(開催国である韓国の国旗)だけを掲揚するのが原則」だと8月31日付で通知した、と明らかにした》

《日本の自衛艦旗は、他国の軍艦旗と同様、自艦を民間船と区別する国際法上の役割がある。防衛省関係者は「非常識な要求。降ろすのが条件なら参加しないまで。従う国もないだろう」としている》

これがどれだけ非礼・無礼な要請なのかは、デイリー新潮でも10月6日「『旭日旗』問題 海自OBは『韓国海軍の軍人が一番恥ずかしい思いをしている』と指摘」で取り上げた。

国際観艦式の模様を伝える青瓦台のfacebook投稿 黄色い「抗日旗」が確認できる

海自OBに取材を依頼すると、軍艦旗は世界中の海軍にとって、国旗と同じくらい重要な旗だと指摘した。記事の核心部分を再掲させていただこう。

《どれくらい非常識なのか、海自OBは喩え話を始める――。もし一部の日本人が、東京の韓国大使館に国旗=太極旗が掲揚されているのを「気に入らないから自粛させろ」との運動を始めたとしたら、我々日本人はどう思うだろうか?
「多くの日本人は呆れ、『韓国に失礼だからやめろ』との世論が高まるでしょう。逆も同じです。韓国人がソウルの日本大使館で国旗=日章旗が掲揚されているのを『気に入らないからやめさせろ』と抗議した場合、日本の世論は今より敏感に反応するはずです。旭日旗の自粛要請は、『国旗=日章旗を掲げるな』との要請に等しいのです」》

結局、10月5日、岩屋毅防衛相(61)は「国際観艦式」への海上自衛隊の参加を見送ることを決め、韓国政府に伝達したと発表した。これで話は終わりかと思いきや、国際観艦式の当日になって意外な展開を見せる。

もちろん、日本でも多くのメディアが報じた。ここでは、共同通信が10月12日に報じた「韓国海軍、反豊臣軍の英雄旗掲揚 政府抗議、国際観艦式で」の記事をご紹介しよう。

《韓国南部済州島沖で11日に開かれた国際観艦式で、韓国海軍が豊臣秀吉の朝鮮出兵に抵抗した英雄、李舜臣将軍を象徴する旗を掲揚していたことが分かった。日本外務省関係者が12日、明らかにした。日本政府は同日、外交ルートを通じて韓国側に抗議した》

「軍人がやれることではない」

ちなみに他の参加国も、韓国側の要請に従わなかった。13日の朝日新聞「7カ国が軍艦旗を掲揚 海自派遣断念の韓国観艦式」をご覧いただこう。

《観艦式には10カ国から、米原子力空母ロナルド・レーガンなど外国艦艇15隻を含む計39隻が参加。このうち豪州、ブルネイ、カナダ、インド、ロシア、シンガポール、タイの艦艇がマストや艦尾に軍艦旗を掲げた。日本政府関係者によると、残る米国、インドネシア、ベトナムは、もともと国旗を軍艦旗として使っている》

この旗、「英雄の旗」と表現されることもあるが、産経新聞は「抗日旗」と表記した。いずれにしても「軍艦旗」とは書けないわけだが、本稿は産経新聞に従う。

この異常事態を“プロ”は、どう見たのか、再び海自OBに取材すると、「あくまでも推測ですが、今回の一件は軍人がやったことではないと思います」と指摘する。

「韓国政府が各国の海軍に『自国旗と韓国の国旗だけを掲揚してください』と要請したにもかかわらず、韓国海軍だけの判断で抗日旗を掲げたとしたら、政府は処分を下すはずです。政府に逆らい、面子を潰した軍艦で、韓国トップの文在寅大統領(65)が演説するはずがありません。政府が抗日旗の掲揚を海軍に命じたと見て間違いないでしょう。シビリアンコントロールという言葉もありますが、軍人はルールに従わなければなりません。ルールを書き換えることができるのは政治家だけです」

軍艦旗を有する7か国が韓国側の要請に全く従わなかったのは、水面下でのすり合わせがあった可能性もあるという。

「国際法に反する可能性さえある異例の要請を行うわけですから、韓国側は日本を除く各国に『これは旭日旗に対する世論を考慮してのことです』と事前に説明したはずです。しかし日本の不参加により、要請の必要性が消滅してしまいました。軍艦旗を持つ各国海軍は韓国海軍に『もう掲揚自粛は意味がないから、軍艦旗を掲揚しますよ』と打診したのではないでしょうか。少なくとも実務者レベルでは、何らかの話し合いが持たれても不思議はありません」(同・海自OB)

旭日旗が「日本帝国主義の象徴」であるという韓国側の主張に理解を示し、それ故の特別な配慮を提言するメディアも少なくない。

ニューズウィークに掲載されているコラム「グレン・カール CIAが視る世界」は11日(電子版)、「日韓を引き裂く旭日旗の呪縛」と、この観艦式の問題を取り上げた。日付から分かるように、式の前に掲載されたものだ。このコラムで筆者は日本側に“妥協”を求めた。主張の部分をご覧いただこう。

《韓国に日本と同じ旭日旗観を強いることは不可能だし、そんな試みをする必要もない。原理原則にこだわる非妥協的な態度を貫けば、日本は無神経で敵対的だという韓国側の主張の証明になる。問題の解決策は単純だ。済州島の港湾や沿岸では旭日旗ではなく日の丸を掲げると宣言すればいい》

だが式で韓国は「抗日旗」を掲揚した。これこそ“反日”の原理原則にこだわる被妥協的な態度と指摘せざるを得ない。「多少は韓国の言い分に耳を傾けなければ」と考えていた日本人も呆れたはずだ。韓国に対する見方も相当に変わったに違いない。「無神経で敵対的」なのは日本ではなく、むしろ韓国の方だろう。

週刊新潮WEB取材班

タイトルとURLをコピーしました