韓国と連携する国内の反原発派… 福島第1原発の処理水問題、日本は事実の国際的な説明を

東京電力は、福島第1原発について、放射性物質トリチウムを含む処理水のタンクが2022年夏ごろに限界が来るとの見通しを示している。政府の小委員会は保管継続の方針との報道もある。韓国が海洋放出計画の有無などについて説明を求めているが、そもそも処理水はどのように対応すべきなのか。

 福島第1原発事故での処理水問題は、過去の世界の原発事故では見られなかった問題だ。福島第1原発では、デブリ(溶融燃料)を冷やし続けるための水や雨水、地下水が放射性物質に汚染されている。東電は、建屋内に入り込む雨水や地下水をできるだけ少なくしてきたが、2014年度平均の1日470トンから減ってきているが、18年度で170トンある。

 東電は、専用装置の多核種除去設備(ALPS)を使って汚染水からセシウム、ストロンチウムなど62種の放射性物質をおおむね取り除いている。ただ、現在の技術では、トリチウムをきちんと除去することは困難だ。

 昨年夏、処理水にトリチウム以外にも、基準値以上の放射性物質が含まれていることが報じられた。反原発派はALPSによりトリチウム以外は除去したと言ってきた東電が嘘をついたと批判した。これに対し東電は、タンクに貯蔵している分で基準を満たしていないものがあるが、環境に放出する際にはもう一度浄化処理(2次処理)を行い、基準を満たすとしている。これらのデータはきちんと情報公開しており、嘘ではないと反論している。

 この問題について、処理水のトリチウム以外の放射性物質が基準値以下であれば、水で希釈して、海水に放出しても問題はない。実際、トリチウムの放出は世界でも行われているからであり、原子力規制委員会も認めている。

 もし処理水にトリチウム以外の放射性物質が基準値よりあれば基準値以下になるまで再除去を繰り返すだけだ。それまで、処理水は保管継続しかない。

 こうした単純な解決方法があるのだが、反原発派は、東電が嘘をついて放射性物質入りの処理水を海に流そうとしているとあおる。これに風評被害を恐れる人々が反応している。さらに、処理水タンクに限界がくるという話に、デブリ取り出し・廃炉の作業がさらに遅れるという話が付け加わる。

 韓国は、こうした動きに乗じて日本政府を攻めたいようだ。国内反原発派と韓国との協力・連携に近い動きだといえる。

 韓国は、日本から福島など8県の水産物を輸入禁止とした問題で、世界貿易機関(WTO)において日本が敗訴したことの「二匹目のドジョウ」を狙っているのだろう。

 福島第1原発の廃炉作業が困難であるのは事実だが、それと処理水問題は別だ。日本の環境への放出基準は世界保健機関(WHO)の規定に照らし合わせても汚染水ではなく、放射能汚染の危険性もない。

 また、日本は基準外の放出をしていないし、するつもりもない。日本に必要なことは、こうした事実を丁寧に、国際的に説明するだけだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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