韓国を昨年訪れた外国人のうち、サウジアラビアなど中東からの観光客の支出額が最も多かったという。いわゆる「オイルマネー」で、美容、メディカルツーリズム(医療観光)を韓国で楽しむ富裕層が増え、かつて「爆買い」が話題になった中国人客を上回った格好だ。その一方で、日本人客の1人当たりの支出額は調査対象国の中で最も少なく、韓国メディアは「日本人が最も『けち』」と、嫌みも込めて批判気味に報じている。
整形、美容、健康…中東富裕層の御用達?
韓国紙、朝鮮日報(日本語電子版)など韓国メディアは、韓国文化観光研究院の調査結果を引用し、中東諸国から昨年韓国を訪れた観光客が、外国人観光客の中で最も支出額が多かったことが分かったと報じた。「オイルマネー」で韓国での美容、メディカルツーリズム(医療観光)を楽しむサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などの富裕層が増え、支出額では一時「爆買い」に象徴された中国人観光客を上回ったという。
同院が昨年韓国を訪れた外国人1万2003人を対象にアンケートを行った結果によると、中東からの旅行客が韓国で支出した旅行費用は1人当たり2593・8ドル(約29万円)にのぼり、2位の中国(2057ドル)を500ドル以上上回った。このほかにロシア(1783ドル)、シンガポール(1573ドル)、香港(1519ドル)などが上位に入った。
米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する中国の報復で訪韓中国人客が激減する中、中東諸国からの観光客が増え、たくさん買い物をしてくれれば韓国政府とすればうれしい限りだろう。
聯合ニュース(日本語電子版)の取材に対し、同院の関係者は「アラブ人の観光支出が最も多いのは、整形・美容や健康、治療の目的で韓国を多く訪れるためだ」と分析。さらに「中東国家を対象に医療観光博覧会を開催するなど、誘致マーケティングを積極的に行う必要がある」と答えている。
日本は「安物買い」かもしれないけど…
だが同じ調査で、日本人の1人当たりの支出額は813・9ドルと最も少なく、調査対象国で唯一1000ドルを下回った。
聯合ニュース(日本語電子版)は、見出しこそ「財布のひもが最も固いのは日本人」と抑え気味だが、本文では「中東からの旅行客が最も太っ腹だった半面、日本人が最も『けち』だった」と批判めいた書き方で報じている。さらに日本人客が韓国で最も多く購入した品目は、味付けのりなど食料品(63・3%、複数回答)だったといい、暗に「安物買い」と指摘しているのだ。
日本人以外に支出金額が少なかったのは、カナダ人(1020・6ドル)、マレーシア人(1032・6ドル)、フランス人(1054・9ドル)などだ。いずれも1000ドルを上回っているためなのか、韓国メディアの批判の対象にはなっていない。
THAAD禍によって訪韓中国人客が激減する中、韓国航空業界の日本人客取り込みに向けた新規就航や増便が相次ぐ。ただ、日本人客の買い物「性向」はあまり問題視されていないようだ。というのも訪韓客数の規模を比べたら、日本人客は中東諸国を圧倒しており、支出も総額では日本人客の方が断然多い。
そうした現実がわかっているにもかかわらず、「1人当たりの支出額」が最少だから「最もけち」と指摘するのは、あまりに短絡的だと言わざるを得ない。本気で日本人客を取り込む意欲があるのだろうかと疑ってしまう。