風を受けてゆらゆら揺れることで発電する風車のない風力発電機「Vortex」

「風力発電機」と聞くと、多くの人は直径数十メートルにも及ぶ巨大な羽根が回転する風車翼タイプのものを連想するハズで、現に多くの風車が世界各地で発電に用いられています。そんな中、スペインに拠点を置く企業「Vortex Bladless」が開発を進めている「Vortex」は回転する羽根を持たず、長い1本の棒がユラユラすることで電力を得るという新しい風力発電機になっています。

Vortex
http://www.vortexbladeless.com/home.php

The Future of Wind Turbines? No Blades | WIRED
http://www.wired.com/2015/05/future-wind-turbines-no-blades/

。従来の回転羽根を持つ風力発電装置に比べ、構造がシンプルなために建造コストが最大で47パーセントにまで削減できることも強みであると同社では語っています。

よく見ると、Vortexは細いロッドを介して上下2分割の構造になっていることがわかります。下部の筒の中には2つの反発する磁石が内蔵されており、左右に揺れる上部の羽根の動きを電気エネルギーに変えて発電するようになっているとのこと。

上部の羽根は軽量のカーボンファイバーとFRP(ガラス強化繊維)で作られており、強度と軽さが両立されているとのこと。羽根を軽量化することによって、発電の効率を高めることができるそうです。

現時点での試験機の結果をもとに、同社ではまず4キロワットの発電能力を持つタイプを製品化する計画を進めています。これは、一般的な家庭用太陽光発電システムと同じぐらいの発電力にあたります。

画像右にあるのが4キロワット型の「Vortex Mini」。さらに同社では1メガワット以上の発電能力を持つ「Vortex Gran」の計画をも視野に入れているとのこと。Vortex Miniは産業用発電や一般家庭などのすぐ近くに設置するタイプの発電装置として、Vortex Granはさらに大規模な発電能力を備え、電力供給会社などでの活用をも視野に入れた設計が行われる模様です。

さらに、全高3メートル程度で出力100ワットという小型のタイプも考えられており、これは開発途上国での活用を考えているとのこと。同社はすでにスペイ ン国内で100万ドル(約1億2000万円)の資金提供を得ることに成功しており、今後はアメリカへの進出も検討されています。

従来の回転翼タイプの風力発電機と比較した際のVortexの性能はこんな感じ。理論上の製造コストは53%の削減が可能で、運用コストも51%削減でき るとのこと。さらに、回転部分を持たないことでベアリングやギヤの摩耗が発生しないことなどから、メンテナンスにかかる費用は80%の削減が可能というか ら驚きです。

ただし、発電効率そのものは回転翼タイプに比べて30%~40%にとどまるというのが弱点といえば弱点。その場合でも、巨大な回転翼を持つ従来の風力発電機に比べて1基あたりのフットプリント(占有面積)が少なくて済むVortexの特性を最大限に活かすことで以下のようにズラリと並べて設置することで、トータルでの発電効率が改善されると同社ではそのメリットを語っています。

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