そう嘆くのは都内在住の主婦(57)。ペットボトルが持ちやすくスリムになったと思えば容量が減っていたり、いつのまにかチーズの中身が小さくなったり、ソーセージの数が減っていたり……。実際いま、お菓子や缶詰、飲料などの身近な食品の多くが値段が変わらないままサイズが小さくなっている。
「ここ20年、円安による原材料費の上昇、賃金値上げや人件費、輸送コストも右肩上がり。一見、価格水準は変わらないものの、これまでと同じように買ってもらうために、企業の涙ぐましい努力で値上げを避け続けてきました。その結果、数年かけて商品が小型化してきているんです」
こう語るのは、大手総合家庭用品メーカーで長年商品開発に携わっていた、プロダクトリサーチャーの四方宏明さん。企業が量を減らして対応する苦肉の策が始まったのは、’05年ごろからと話すのはファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さん。
「’08年はバター不足や海外の穀物の高騰など大幅な食料高騰で、多くの企業が量を減らして対応しています。さらにアベノミクスが始まった’13年からも小さくなっています」(山崎さん・以下同)
ただ、この縮小もそろそろ限界だという。
「商品を小さくするのも、値上げの印象を与えにくいだけで、実質値上げ。これはインフレの前兆です。原材料が上がるとこのまま値上げを抑えるのは難しい。いつか物価上昇が始まります」
インフレの入口に差し掛かっている今から、家計は厳しく引き締めておくべきだと山崎さんは指摘する。
「そうなると給料が上がったと喜んでも、商品の値段もこぞって上がります。家計を今から引き締めていくことが必要でしょう。食費や日用品がすべて1割減になったと考えれば、これまでと同量を買おうとするとそれだけ負担増になります。サイズダウンに気づかず、家計を回していると、赤字になることも」
取り急ぎ、サイズダウンに対抗する方法はないだろうか。
「まずは、飲み残しや廃棄ロスを減らすこと。コップに注いだジュースを飲み残したまま捨てていることはありがちなことでしょう。容量が減った1~2割の元がとれる計算です。洗剤なども、適量の使用を心掛けるようにしましょう」
小さくなり続ける食品――。それには、家計も縮小して備えることが必要になりそうだ。