昨年秋から本格化した食品の値上げが、いよいよ加速し始めた。 帝国データバンクによると、8月は月間ベースで今年最多の2431品目が値上げされる見通しで、これまで最多だった7月(1607品目)を大きく上回る。特にコロナ禍で人気の家庭用の冷凍食品は、大手5社が8月1日に400品目超を一斉に値上げ。感染者数が再び急拡大する中で「巣ごもり」生活を直撃しそうだ。 【図解】8月の主な食品値上げ 「コロナ禍で利便性や品質の高さが見直され、市場が活況を呈している」。7月上旬、冷凍食品の新商品発表会でニチレイフーズの松尾哲哉専務は市場拡大の背景をこう説明した。 実際、コロナ禍で冷凍食品は好調だ。日本冷凍食品協会の調査によると、家庭用冷凍食品の2021年の生産額はコロナ禍前の19年と比べ2割以上増加した。 一方で、企業には原材料や輸送などのコスト上昇がのしかかる。各社とも自助努力では賄えず、値上げに頼らざるを得ないのが実情だ。8月1日は大手5社がそろって値上げに踏み切り、対象もうどんから唐揚げ、ドリア、ラーメン、チャーハンと幅広い。 冷凍食品以外の値上げも続く。8月中旬以降はハウス食品が「バーモントカレー」などの価格を引き上げるほか、江崎グリコは「ビスコ」の大袋商品で内容量を減らす「実質値上げ」。東ハトは「キャラメルコーン」の内容量を減らした上で、価格も6.7%上げる。 帝国データの担当者は「食品各社は値上げで大きな買い控えが起きると見ておらず、値上げへの抵抗感は薄れている」と、価格をめぐる企業心理の変化を指摘。「コストが上がればちゅうちょなく値上げする企業も出てきている」と話す。 秋には夏を超える約8000品目の食品値上げが予定され、年間で2万品目に達する見通しだ。