私たちの身の回りには、食べ物が溢れかえっている。24時間営業のスーパーやコンビニエンスストア、安さを謳う外食チェーン……。街に一歩出れば手軽に食べ物を入手できる毎日は便利で快適だ。ただ、それらの食品の“安全性”を、日頃私たちはどのくらい意識できているだろうか。

誰も教えてくれないスーパーや外食チェーンの裏側を公開して話題になっているのが、『知らないと危ない! ズルい食品ヤバい外食』(河岸宏和/永岡書店)だ。著者の河岸宏和氏は、農場から食卓まであらゆる場所の品質管理に携わり、食品業界の現場を知り尽くした、食品のプロ。彼によると、スーパーやコンビニ、外食チェーンは“消費者重視”と“利益重視”の店舗にはっきりと二極化されるという。

本書では、様々な角度から食品や店舗を分析し、買っていい食品とダメな食品、通っていいお店とダメなお店を見抜くコツを余すことなく紹介している。「ズルい食品」編と「ヤバい外食」編の間に掲載されているワンアドバイス集も見逃せない。

 

「産卵日」が表示されていない理由とは?

ズルい食品を見抜く大きなヒントとなるのが、「食品表示」。例えば卵なら、賞味期限だけで「産卵日」や「採卵日」を表示せず販売しているのは、ズルい卵の証拠だという。「産卵日」が表示されていない理由は、生まれた卵をしばらく保管し、お客さんが多い土日祝日に向けて大量に出荷しているから。産卵日を表示すれば、その卵が古いものだとわかってしまうのだ。

このように本書では、食品表示をもとにズルい食品のからくりが次々と暴かれていく。ちなみに朝食に欠かせない存在のハムには、こんな驚きの事実が隠されていた。

 

100キロの豚肉ロースから150キロ以上のロースハムが製造される!

ハムやベーコンなどの食肉加工品を選ぶときは、食品添加物よりも原材料のチェックが最優先。本書の記載によれば、ロースハムとは「豚のロース肉だけを使用したハム」のこと。つまり、原材料として「豚ロース肉」だけを使っていなければ、本来ロースハムとは名乗れない はずなのだ。それにもかかわらず、多くのハムメーカーでは大豆、卵白、乳などの安く調達できる原材料を使ってかさ増しをしているという。食品表示に「大豆たん白」「卵たん白」「乳たん白」などを見つけたら、要注意だ。

さらに「ヤバい外食」編では、身近な牛丼チェーン店の選び方について、具体的な店名を挙げて言及している。

 

美味しい牛丼チェーンは、主力メニューにこだわりのある店

牛丼チェーンなら、言うまでもなく牛肉が最も美味しくあるべき。それにもかかわらず、キホンをないがしろにしてメニュー数をどんどん増やす店が増えているという。そんな店には、店員が1人で店内を切り盛りするワンオペレーション問題など、改善が必要な点も見受けられる。これらを踏まえてどの牛丼チェーンがおすすめなのかは、ぜひ本書で確認してほしい。

本書を読み終えてすぐに、家じゅうの食料品の食品表示を片っ端から見返し、実際にいくつか「ズルい食品」を発見して震え上がった。自分自身の健康はもちろん、大切な家族にも安全で美味しい食品を食べてほしいと思う人は、ぜひ本書をきっかけにして、食品や飲食店の選び方について見直してみてほしい。あなたの行きつけのスーパーでも、ズルい食品が当たり前のように販売されているかもしれないのだから。

文=佐藤結衣