食品:コーヒー、ワイン、即席麺…秋から冬 次々に値上げ

 ◇円安で仕入れ価格高騰、「コスト削減、これ以上は限界」
 秋から冬にかけて食品が次々と値上げされる。急激な円安などを受け、仕入れ価格が高騰しているためだ。4月の消費増税後、物価上昇に給料の伸びが追いつかない状況が続く中、身近な品々の値上がりは、消費をさらに冷え込ませかねない。
 UCC上島珈琲は11月1日から、スーパーなどで売るすべての家庭用レギュラーコーヒーを値上げする。主要産地のブラジルの干ばつでコーヒー豆の生産量が減少、8月中旬ごろからの急激な円安もあり、輸入価格が昨年11月に比べ2倍以上になったからだ。主力の「UCCゴールドスペシャル スペシャルブレンド(400グラム)」の店頭想定価格は税抜き702円から878円に上がる。
 アサヒビールとキッコーマンは、フランスなどからの輸入ワインを平均8%値上げする。こちらも天候不順で原料のブドウの価格が上がった。キリンビール傘下の中国酒販売「永昌源」は、中国での人件費上昇などのあおりで、輸入紹興酒を値上げする。
 即席麺の値上げは、円安に加え、新興国の需要拡大で小麦など輸入原材料価格が上昇したことが要因だ。包装資材の仕入れ値が上がったり、ガソリン、軽油価格の高止まりで輸送費がかさんだりしていることも影響している。最大手の日清食品は主力の「カップヌードル」などの価格を来年1月から引き上げる。値上げは2008年以来7年ぶり。広報担当者は「これまではコスト削減で吸収してきたが、原材料価格が下がる見通しはなく、これ以上は限界」と話す。
 消費税率が8%に引き上げられた4月から、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は毎月、前年同月より3%超上昇しているが、そのうち生鮮食品以外の食料品は、4%台の伸び。チョコレートやハム、ソーセージ、乳製品などが円安による輸入原材料の上昇で値上がりしたことが響いている。
 生鮮野菜もこの夏は天候不順を受け高騰。今月は平年並みに落ち着く見通しだが「ハウス栽培に使う燃料代が上がれば、この冬も野菜が高くなってしまう」(東京都内のスーパー)と懸念の声も出ている。
 物価上昇分を除いた給料(実質賃金)は8月まで14カ月連続で前年実績を下回った。みずほ証券の末広徹マーケットエコノミストは「食料品の値上がりは、実質賃金の上がっていない家計には厳しく、消費を控えてしのごうとの動きが広がりかねない」と指摘する。【鈴木一也】

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