食肉偽装大国・中国で、発覚後の現地マクドナルドに客が殺到したワケ

中国の大手食品加工会社「上海福喜食品」が、使用期限切れの鶏肉を使用していた問題は日本に大きなショックを与え、日本マクドナルドは中国製チキン商品の販売中止を余儀なくされた。7月29日には、就任間もない日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長が記者会見を開いて陳謝。上海福喜食品との取引を解消し、安全性と信頼の回復に向け、徹底的に不安要素を排除していくと表明した。
カサノバ社長は今回の問題について、「悪意を持った数人の従業員が起こした特殊な事件」との見方を示したが、世界トップのファストフード企業を巻き込んだ食品衛生スキャンダルは、日米など各国に衝撃を与えている。
そんな事態にもかかわらず、なぜ中国のマクドナルドで客が殺到するほどになったのか。中国の食品製造の現場に詳しいジャーナリストの程健軍(チェン・ジェンジュン)氏に聞いた。
「そもそも、一部の富裕層を除く中国の庶民が日常的に口にする肉といえば、『混合肉』と呼ばれるビニールチューブ袋詰め肉。多くは羊肉をメインに鶏肉などが混ぜられている……ことになっていますが、実際に何が混入されているかわかったものではありません。もちろん消費者も、『たぶん、いろいろ混ざってるんだろうなあ』と覚悟した上で食べています。『安い肉は安全が保証できない』『肉の種類は食べてみないとわからない』というのは、子供でも知っている常識ですよ」
だから、今回発覚した「使用期限切れ」や、「床に落とした肉を拾って使う」くらいでは、誰も驚かないというわけか。
「ええ。むしろ当局の調査が入ったことで、『マクドナルドは100%ホンモノの鶏肉や牛肉を使っていた』ことが証明されたという衝撃のほうが大きかったでしょう。得体の知れない肉でも『ウマくて死ななきゃいい』と思っているわけですから、少々の期限切れや、床に落とした程度なら、ホンモノの肉への評価は変わりません」(程氏)
つまり、今回の事件も日本マクドナルドの社長が言うような「特殊な事件」ではなく、中国の庶民にとっては普通の行為だ、と?
「そのとおりです。現地テレビ局で紹介された『これくらい食べたって死にはしない』という従業員の声は、自己弁護ではなく100パーセントの本音。もし、あの落とした肉をそのまま捨てたら、神様のバチが当たる……というより、その前に必ず誰かが拾って食べるでしょうね」(程氏)
国際問題にまで騒動が広がった事件が、中国では返って「本物の証明」として受け止められているという異常な状況。この食品製造の実態を知らずして、かの国とのギャップは埋めるべくもない。
(取材/近兼拓史)
■週刊プレイボーイ33号「中国『食肉偽装テク』大行進 猫肉を羊肉(シシカバブ)にするため何に漬けるか?」より

タイトルとURLをコピーしました