飲食店などで予約した客が連絡せずに来店しない「無断キャンセル」。見込んでいた売り上げを失ったり、準備した食材や人件費が無駄になったりするリスクがあり、業界では「No Show」(ノーショー=姿を現さない)と呼ばれ、強く警戒されている。そんな中、保証会社が損害分をカバーしたり、弁護士が回収業務を代行したりするサービスが相次ぎ登場。どんなシステムなのか。
【表でみる】「無断キャンセル」は損害賠償請求に発展することも
■予約サイトとも連携
「ネットの普及で予約や申し込みが簡単にできるほど、ノーショーのリスクが高まっている」と分析するのは保証事業会社「ガルディア」(東京)の小山裕社長だ。
同社は平成29年から飲食店や美容院を対象に無断キャンセル被害の保証サービスを開始。加盟する飲食店などは、今年中に3万事業者に達する見込みという。
無断キャンセルが発生すれば、予約されていたコースなどの代金をガルディアが店側に全額保証する仕組みだ。店側が同社に支払う保証料は、月額で1万円に満たない程度。無断キャンセルによる被害請求額は、1店舗あたり平均5万~10万円程度という。
大手予約サイトとも連携。無断キャンセル歴がある人から新たに予約があった場合、ガルディアから店側にそうした情報を伝えることもできるといい、事前のリスク低減にも努めている。
今後は無断キャンセルだけでなく、直前の予約キャンセル(ドタキャン)へのサービス拡大も検討中といい、小山社長は「新しいニーズに対応していきたい」と話す。
■弁護士が「抑止力」に
7月には、無断キャンセルで発生した被害分を弁護士が代行回収するサービス「ノーキャンドットコム」も立ち上がった。
店側の会員登録は無料。無断キャンセルが起きた場合、店側から連絡を受けた弁護士が、無断キャンセルした人に連絡を取り、被害分の返還を督促する。
具体的には弁護士名義のショートメールを複数回送って入金を求めるといい、サービスを立ち上げた北周士(かねひと)弁護士は「テスト段階での回収成功率は約8割。十分、飲食店のお力になれると考えた」。回収できた場合は、3割が手数料となる。店側の要望次第では訴訟も支援する。
すでに、10店舗以上がサービスに登録中。北弁護士は、弁護士が無断キャンセル問題に積極的に関わることが被害の抑止につながるとも考えており、「最終的にノーショーが起きない社会を目指したい」と訴えた。
経済産業省が平成30年に公表した「対策レポート」によると、無断キャンセルによる飲食業界の被害額は年間で約2千億円(推計)。飲食店での予約全体の1%弱を占めるとされる。さらに予約1日前と2日前にそれぞれ生じるキャンセル分を加味すると、被害発生率は6%強に達し、被害額は計約1・6兆円に及ぶとされる。
一定の確率で発生する被害を穴埋めするため、店側が通常のメニュー料金に被害額を転嫁していた例もあり、キャンセル問題は何の落ち度もない一般客にも“被害”を与えている可能性がある。
一方でレポートは、無断キャンセルなどでの損害は債務不履行や不法行為に該当するとし、店側は客に対して損害賠償を請求することが可能と明記。事前のキャンセルでも同様との考えを示している。