飲食業、バイト不足深刻 「時給上げても集まらない」 一部で営業短縮

石川県内の外食産業で、金沢を中心にアルバイトやパート不足が深刻化している。何とか人材を確保しようと募集賃金を上げる店も多く、平均額は9月まで13カ月連続で前年同月を上回った。「時給を上げても人が集まらない」と頭を抱える経営者も多く、やむなく営業時間を短縮する店も出てきた。背景には、北陸新幹線開業に向けた新規出店の増加に加え、「飲食業はきつい」と敬遠する若者が、景気回復で人材を求める他業種に流れたことがあるとみられ、人材争奪戦は当分続きそうだ。
 「募集をかけても見つからない。こんなことは今まで記憶にない」。金沢市片町2丁目の割烹(かっぽう)料理「新橋こうや」では、時給を片町の飲食店の中でも高めの千円に設定したが、求人誌に載せても反応がなく、調理師専門学校で募集をかけてようやく人員を確保した。
 店主の辻野守さんは「飲食の仕事は体力的にきついし、人との関わりも多い。最近の若者は苦手なのではないか」とみている。
 新規出店が続く金沢駅近くでも、店頭に「アルバイト・パート募集」の貼り紙を掲示する店が多い。駅周辺の居酒屋の担当者は「派遣会社に頼んでも人が集まらない」と嘆く。パートの時給を850円から900円に上げたものの、応募はないという。
 求人情報大手のリクルートジョブズ(東京)によると、県内9月の飲食店関連のアルバイト・パート平均時給は、前年同月比12円増の858円で、昨年9月以来、前年同月を上回り続けている。外食産業の時給上昇は全国的な傾向で、同社は「少子化で若者バイトの絶対数が減っているのが要因だ」と指摘する。
 北陸でラーメン店をチェーン展開する会社では、900円の時給を30円ほど上げることを検討中だ。採用担当者は「若者が集まらない。高齢者の積極的な採用も検討していかなければならない」と話した。
 県内に18店舗を展開する牛丼チェーン「すき家」は今月1日から深夜営業を短縮しており、21日現在、24時間営業は金沢寺地、上小松の2店のみ。他は午後10時や午前0時、同1時閉店などとしている。担当者は「深夜帯に複数人が勤務できるようになった店から順次、24時間営業に戻したい」と話した。
 小売業界の出店で、さらに人手不足に拍車がかかる可能性もある。野々市市や白山市では大型商業施設「イオンタウン」が今秋、スーパーマーケット「バロー」が今冬、大型商業施設「ラスパ」が来春に開業見通しだ。来夏には時給千円以上とされる大型会員制倉庫店「コストコ」もオープン予定で、金沢近郊も巻き込んで、人材をめぐる綱引きはさらに過熱しそうである。

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