餃子の王将、「7カ月連続」で過去最高売り上げ 「増税&新型コロナ」のダブルパンチを食らっても絶好調の秘訣とは

新型コロナウイルスの影響が、企業を直撃している。帝国データバンクの調べによると、新型コロナの影響を受けた倒産の件数は3月11日時点で8件。そのうち半数は旅館経営や国内旅行業といった、「レジャー消費」にかかわる事業を運営していた。

【画像】生産する餃子は600店舗分! 埼玉県東松山市にあるセントラルキッチン

 小売店への影響も大きい。小売店に対してお客の分析ツールなどを提供するABEJA(東京都港区)は3月12日、同社のサービスを利用する約700店を対象にした来店者数や売上高などの推移調査結果を発表。厚生労働省が国内1例目の感染者確認を発表した1月16日以降、2月末までにかけて来店者数、店前通行者数、売上高ともに減少。3月2~8日の期間では、店舗売上高が前年同期比の55.1%と、半減近くまで落ち込んでいる。

 飲食店は、2020年が「うるう年」のため、例年よりも暦の数が1日多かったことから、それほど落ち込んでいるところは少なかった。とはいえ、19年に10%への消費増税があったことに加えて今回の“コロナショック”となれば、影響はこれから本格化してきそうだ。そんな中で気を吐いてるのが、中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービス(以下、王将)だ。

 王将は、19年10月の消費増税以降も20年2月まで前年同月比で100%以上の売上高を堅持。さかのぼり、19年8月から7カ月連続で「同月比過去最高売上高」を更新している。また、20年2月には直営既存店での売上高が前年同月比で110%超え(111.3%)。同23日には、1日の売上高が「3億1600万円」を超え、今期3度目となる「創業以来過去最高売り上げ」の更新となった。

 同社は好調要因について、生ビールを対象に実施したキャンペーンや、マスコミへの露出増加を挙げているが、小売・流通アナリストの中井彰人氏は「王将は飲食業界の中でも“特殊”な存在だ」と前置きした上で、その他の要因からも王将の“すごさ”を分析する。

王将は特殊、その理由

 中井氏は、昨今の飲食業界について「消費増税があり厳しい中で、新型コロナウイルスのダブルパンチ。消費者の目はどんどんと『中食』へ移っている」とコメント。こうした中でも王将がうまく“カウンターパンチ”を繰り出せていることについて2つの要因を挙げた。

 1つは、「従業員のモチベーション向上」だ。飲食業は、長時間労働や低賃金が珍しくない業界として数えられることもある。また、それを理由に求職者に対して「不人気」な業界として語られることも多い。しかし、中井氏は飲食業界不人気の本質的な理由を「長期的なキャリア展望の描きづらさにある」と指摘する。つまり、長く働いてもなかなかキャリアアップしづらかったり、選択肢が少なかったりする環境だということだ。

 一方、王将では「王将調理道場」「王将大学」といった制度を用意することで、こうしたマイナス面をカバーしている。王将調理道場では、一定水準の腕前となるよう、従業員に対して調理技術などを指南。また、王将大学では主にマネジメントを指導。調理面と経営面の双方から、全店舗一律でスキル向上を図っている。さらに、フランチャイズでの独立支援も旺盛に行う。公式Webサイトによると、「一般加盟」と別に「社内独立制度」を用意。フランチャイズ店オーナーの半数以上が王将からの“独立組”だという。

 2点目が「設備投資の充実」だ。王将は現在、日本国内に4つのセントラルキッチンを保有し、配送拠点としても運用している。そのうち、16年に竣工した東松山のキッチンには「成形餃子システム」を導入し、約600店舗分の餃子をまかなうことができると公式Webサイト上で紹介している。こうした効率化により価格競争で優位に立ち、効率化による従業員負担の軽減に成功している。

 王将は17年3月期まで3年間、売上高が前期比でマイナス続きだった。苦しい時期でもこうした“足腰”への大規模な設備投資を欠かさず、しっかりと長期的な立て直しを図れている点に、カウンターパンチの秘訣がある。

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