養殖ワカメで漁業者増収  名取・閖上沖で生育試験開始 アカガイ貝毒深刻 漁獲の柱模索

東日本大震災で被災した宮城県名取市閖上地区の沖合で、ワカメの養殖試験が始まった。主力魚種のアカガイが貝毒に見舞われており、漁業者の新たな収入源にと、市や漁協などの市水産問題対策協議会が閖上沖に適した種苗を探る。仙台以南での本格的なワカメ養殖は初めてといい、乾燥カットワカメ製造の理研食品(多賀城市)が協力する。
 「『閖上わかめ』養殖プロジェクト」と銘打った試験で、閖上の漁業者14人が作業に当たる。海中に浮かべた縄に「種糸」を巻き付けて養殖する施設を沖合4キロに設置。2018年11月上旬以降、水深を変えて5種類の種苗の生育状況を調べる試験に入った。
 2週間に一度の観察では成長は順調だ。全長5センチほどの種苗が種類によっては約1カ月で最長67.5センチまで伸びた。協議会は3月末まで観察し、生育の良い種苗を選別。来年度以降の事業化を視野に入れる。
 閖上の漁業者はアカガイ漁で生計を立ててきたが、近年は漁獲量が減少。震災後は毎年のように貝毒が発生している。新たな収入の柱として16年に許可されたシラス漁に続き、比較的取り組みやすいとされるワカメに狙いを定めた。
 閖上沖は外洋に面した流れの速い海域。漁業者の間では養殖ができるのかという不安もあるため、まずは試験を行うことにした。閖上地区の水産加工団地に研究・加工施設「ゆりあげファクトリー」を整備した理研食品が支える。
 協議会の会長として現場を視察した山田司郎市長は「漁業者は非常に厳しい状況に置かれている。新芽ワカメは、しゃきしゃきとした歯ごたえで甘みも強い。新たな特産品になる」と事業化に期待を寄せる。

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