首相「成長と分配、実現への全体像」 骨太方針「参院選後に具体化」

政府は7日、今後の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を閣議決定した。ウクライナ危機などを踏まえ、防衛力を「5年以内に抜本的に強化する」と明記した。また、骨太の中核となる「新しい資本主義」の実行計画も決定。岸田文雄首相が打ち出した「資産所得倍増プラン」については、年末に具体策をまとめることなどを盛り込んだ。

 岸田政権としては初の策定で、夏の参院選に向け与党の公約に反映される見込みだ。岸田首相は7日、経済財政諮問会議と新しい資本主義実現会議の合同会議で、「成長と分配の好循環を実現するための政策の全体像を示した。参院選後に総合的な方策を具体化する」と話した。

 成長戦略である「新しい資本主義」は、人材や科学技術、新興企業や脱炭素・デジタルという4分野への投資が柱。人材への投資では、社会人の学び直し支援などに3年間で4000億円規模を投じることを盛り込んだ。このほか、「できる限り早期に」最低賃金を1000円以上に引き上げることや、「資産所得倍増プラン」を打ち出した。

 同プランは、貯蓄に偏る国民の金融資産を株式など投資にシフトさせるのが狙い。少額投資非課税制度(NISA)の拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo)の改革などを進める計画で、年末に具体策を示す。

 脱炭素関連では、官民合わせて10年で150兆円規模を投資する。

 安全保障分野では、ロシアのウクライナ侵略を引き合いに、「インド太平洋地域においても力による一方的な現状変更やその試みが生じている」と指摘。本文欄外の注釈という形で台湾情勢に言及した。防衛費の具体的な水準には触れていないものの、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国内総生産(GDP)の2%以上の国防予算を確保しようとしている状況を紹介。防衛費の増額方針を打ち出した。

 財政健全化では、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2025年度に黒字化させるという目標年限の記載を見送った。自民党内の積極財政派の反発を受けたためで、昨年の骨太と比べ財政再建は後退した印象となった。

 23年度の予算編成の方針についても、党内に配慮し歳出改革が「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との文言を追加。歳出拡大の余地を設けた内容となった。【高橋祐貴】

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