首都圏の中古マンション「売れる街」「売れなくなった街」を実名公開する 中古の「価値上昇ランキング」を掲載

東京カンテイが『2020年中古マンションリセールバリュー』を発表した。これは、10年前に新築分譲されたマンションが、現在の中古マンション市場で、いくらで取り引されているかを調べて、分譲価格と比較したものだ。首都圏ではリセールバリューが164.3%と分譲価格より6割も高くなった駅があるかと思えば、同じ路線でも1割以上下がっている駅もある。資産価値を重視するなら、十分に注意しておきたい点だ。

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首都圏マンションは10年前の分譲時より高く売れる

東京カンテイのリセールバリューというのは、10年前に分譲されたマンションがあった駅のうち、現在も取り引きが活発で比較が可能な駅を抽出、現在の取り引価格が分譲時価格の何%になっているかを算出したものだ。

分譲時価格が5000万円で、現在の取り引価格が6000万円に上がっていれば、リセールバリューは120%で、4000万円に下がっていればリセールバリューは80%になる。

リセールバリューの数値が大きいほど資産価値が上がっていることを意味するわけだが、首都圏のリセールバリューは、図表1にあるように、2018年には91.4%だったのが、2019年には94.3%に上がり、2020年には101.9%と、ついに100%を超えた。

つまり、首都圏の平均的なマンションであれば、10年前の分譲時の価格より値上がりしているわけで、物件によっては大きな値上がり益を享受できる可能性が小さくないことを意味する。

これはいうまでもなく、この1年間で急激に中古マンション価格が上昇したためにほかならない。

図表1 首都圏マンションの坪単価とリセールバリューの推移

(資料:東京カンテイ『2020年中古マンションのリセールバリュー(首都圏)』107RV_shuto.pdf (kantei.ne.jp)
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図表1のブルーの棒グラフにあるように、新築マンション平均坪単価は2018年が214.2万円、2019年が222.3万円、2020年が221.0万円とさほど変化がないのに対して、分譲から10年後の現在の中古マンションはオレンジの棒グラフにあるように、平均坪単価は2018年が202.2万円、2019年が217.0万円、2020年が231.9万円と急上昇している。

あの東横線の高級住宅街が1位

2018年と2019年はブルーの棒グラフである新築平均坪単価が、現在の中古マンションとしての平均坪単価を示すオレンジの棒グラフより高くなっている。それが、2020年にはオレンジの棒グラフのほうが、ブルーの棒グラフより高くなっている。すなわち、分譲から10年後の資産価値が新築時を上回っているわけだ。

調査に当たった東京カンテイによると、10年前と現在が比較可能な、首都圏で調査対象になった駅は412駅で、うち、リセールバリューが100%を超えた駅が214駅で、次いで90%以上100%未満が105駅、80%以上90%未満が67駅、70%以上80%未満が16駅、70%未満が10駅となっている。

平均ではリセールバリューが100%を超えているといっても、すべての駅が100%を超えているわけではない。なかには、中古マンション価格全体が上がっているなかでも、下がり続けている駅もある。そんな駅を選択してしまったら、買ってからたいへんな後悔をすることになりかねない。

もちろん、取得するマンションに永住することが前提であれば、資産価値が低下しても快適に居住できる限り全然問題はないだろうが、長い人生、想定外のことが起こる可能性もある。

突然の転勤で、家を売却せざるを得なくなった、また、体が不自由になったので、売却してサービス付き高齢者向け住宅などに移らざるを得なくなったという事態もあり得る。

そんなときに、資産価値の上昇を期待できるエリアに買っておくかどうかが、次のステップの成否を大きく左右することになるだろう。そこで、首都圏のリセールバリューのランキングをみると、図表2のようになっている。

図表2 首都圏駅別リセールバリューランキング

(資料:東京カンテイ『2020年中古マンションのリセールバリュー(首都圏)』
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トップは東急東横線の代官山駅で、リセールバリューは164.3%だった。2位は東京メトロ南北線の溜池山王駅の145.8%、3位がJR京浜東北線の桜木町駅の141.2%だった。

リセールバリューが落ちている街は?

10年前に代官山駅周辺で新築マンションを買った人の資産価値は、平均すると6割以上もアップしていることになるが、現在の坪単価は691.4万円だから、20坪、66?でも1億4000万円近くになる。平均的な会社員では簡単に手を出せない水準だが、なかには、何とかなりそうな駅もある。

たとえば、10位の東京メトロ銀座線、田原町駅のリセールバリューは134.9%だが、現在の平均坪単価は323.6万円だから、20坪、66?だと6472万円。けっこう高いとはいえ、頑張れば何かとかなりそうという人も少なくないだろう。

こうしたエリアでマンションを取得しておけば、将来的な資産価値の向上が期待できるかもしれない。

しかし、その一方では、人気沿線でもリセールバリューが低下している駅もあるので注意が必要だ。

リセールバリューが100%を超えている駅の多くは、首都圏では都心や山手線の少し外側と、横浜周辺などに多くなっているが、このところは城西・城南方面より城東・城北方面への広がりが目立っている。

山手線沿いは根強い人気を誇る/photo by istock

城東・城北方面は、これまで相対的に価格が低かったため、割安感から人気が高まっていて、結果的に中古マンション価格が上昇、リセールバリューが高まっている。

それに対して、郊外部ではまだまだリセールバリュー100%未満のエリアがある。東京都では立川駅から西側、埼玉県では大宮駅から北側、千葉県では船橋駅から東側、神奈川県では大船駅から南側などがそうだ。

こうしたエリアの物件価格は相対的にかなり安いが、その分将来の資産価値の上昇は期待しにくいということになる。取得するなら、その点を十分に認識した上で決断するべきだろう。

最近人気の埼玉県はどうか?

人気沿線でも、駅によって格差が大きい。たとえば、首都圏でも人気の高い東急東横線は、代官山駅がリセールバリューのトップで、中目黒駅が16位に入っているが、すべての駅がリセールバリュー100%を超えているわけではない。

超高層マンション街の「元祖」とも言える武蔵小杉駅は100%を超えているものの、そのふたつ先の日吉駅のリセールバリューは90%未満で、そこから横浜寄りの綱島駅、大倉山駅は100%を超えているものの、菊名駅と妙蓮寺駅は100%を切っている。

そして横浜駅になるとやはり100%を超える。人気沿線だからといっても、どこでも資産価値が上がるわけではないので注意が必要だ。

最近は住んでみたい街ランキングで上位にランクされるようになった埼玉県方面では、京浜東北線の川口駅はリセールバリュー100%超えだが、そのひとつ先の西川口駅、その先の蕨駅はリセールバリュー100%を切り、浦和駅や北浦和駅は100%を超えるものの、その先の与野駅は100%未満となっている。

同じ沿線であっても、駅によってマンションの資産価値上昇率は異なる。マンション選びに当たっては、十分に注意しておきたい。基本的には価格相場が高いほど、リセールバリューも高い傾向にあるが、そのほか、エリアの発展状況、将来性などによってリセールバリューには格差が生じる。資産価値にこだわるのであれは、そこまで調べて決定するようにしたい。

東京カンテイのリセールバリュー調査の概要は誰でもホームページでチェックできるので、ぜひご覧いただきたい。首都圏だけではなく、近畿圏、中部圏、福岡県の4エリアが紹介されている。

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