首都圏マンション販売競争激化 「始発駅」「都心へのアクセスの良さ」が売り

首都圏の新築マンション市場で、若いファミリー層をターゲットに「始発」「都心へのアクセスのよさ」といった条件を備える駅周辺での販売競争が活発化している。

電車に座って通勤

「電車の中から富士山を眺めるのが楽しみだったのに、見えにくくなった」−。東京メトロ北綾瀬駅(東京都足立区)の周辺に住む40代の会社員が指摘するように、沿線でマンション開発が相次ぐ。

2019年から千代田線への直通運転が始まる北綾瀬駅は始発駅となり、都心へのアクセスが一気に向上するため、人気が高まるとみられている。総合地所やタカラレーベンなどが販売合戦を繰り広げ、業界関係者は「人気エリアとして大化けする可能性が高い」と指摘する。

首都圏マンション市場で「都心好調、郊外不調」といったイメージが定着する中、始発駅の人気は意外に堅調だ。大和ハウス工業が15〜16年にかけて売り出した「プレミスト高尾サクラシティ」(八王子市、416戸)は、最多販売価格帯が3LDKタイプの3500万円台。「郊外の大規模物件は苦戦するのでは」といった外野の声を裏切り、7期の分譲がすべて即日完売した。徒歩6分の場所にあるJR高尾駅は中央線始発駅で、座って新宿や東京に通勤できることが魅力となったのだ。

利便性という観点から脚光を浴びているのが、東京都足立区に隣接する埼玉県八潮市。住友不動産が販売している「シティテラス八潮」(総戸数493戸)では、これまでのモデルルームへの来場者のうち荒川区や江戸川区といった都区部の城東地域の住民が約6割を占める。

つくばエクスプレスの最寄り駅から秋葉原駅(東京都千代田区)まで最短17分という近場にかかわらず、3LDKタイプで2980万円からという割安な価格帯が人気の理由だ。

神奈川県中央部に位置する海老名市も新たな激戦区として注目を集めるエリア。小田急電鉄の特急ロマンスカーが海老名駅に停車するようになり、複々線化によって都内への通勤時間が大幅に短縮されたからだ。

西口の再開発エリアを中心に、ツインタワー型の「グレーシアタワーズ海老名」(相鉄不動産など、477戸)や「海老名ザ・レジデンス」(サンケイビルなど、412戸)といった大型物件の開発が相次ぐ。手に届きやすい価格帯も注目の的。海老名ザ・レジデンスの場合、3LDKタイプの価格は3700万円台からだ。

大型商業施設も磁力

始発やアクセスのよさといったキーワードに大型商業施設を組み合わせると、購入層を引き寄せる磁力はさらに強くなる。例えばプレミスト高尾サクラシティの場合、120店舗で構成される「iias(イーアス)高尾」との一体開発が決め手となった。海老名の物件群も「ららぽーと海老名」まで徒歩数分という利便性が人気の要因だ。

業界関係者がこれからマンション開発が活発化すると指摘するのは、神奈川県東部を基盤とする相模鉄道の沿線。19〜22年度にJR東日本、東京急行電鉄と相互乗り入れを始めるためで、主要駅の二俣川(横浜市旭区)から新宿までの所要時間は15分程度短縮される見通し。このエリアを得意とする相鉄不動産を中心に開発競争は激化するとの見方が強い。

「働き方改革が進み(場所の制約を受けずに柔軟に働く)テレワークが普及すれば、郊外型マンションの優位性が再び見直されるはず」−。業界内ではこうした見方も浮上しているが、本格普及については、まだまだ時間を要するのは必至。このため当面は、始発駅に近いなど都心へのアクセスのよさをターゲットとしたデベロッパーによる事業戦略が主流となりそうだ。

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