首都圏マンション“3年ぶり下落”のカラクリ 「ついに不動産バブル崩壊」は見当違い?

 7月22日に不動産経済研究所が発表した、首都圏1都3県の「新築マンション1戸当たりの平均価格」が話題だ。発表されたデータによれば、2024年1月〜6月期の東京23区の平均価格は16.3%下落し、1億855万円だという。これを受けての“3年ぶりの下落”報道に、さっそくSNS上などでは「ついに不動産バブル崩壊だ!」といった意見が出ているが、不動産関係者の見方は――?

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東京23区の販売戸数が急減

 まず1都3県全体のデータから見ると、1戸当たりの平均価格は7677万円で、前年同期と比べ13.5%の下落となる。販売戸数も減少しており、9066戸は同じく前年同期比で13.7%の減少だ。

「中でも目立つのが、東京23区の発売戸数の減少です」

 そう指摘するのは、都内の不動産関係者だ。

 確かに、東京23区に限った販売戸数で見ると、3319戸で前年同期比32.3%減と、特に減少幅が大きい。

「土地取得のコスト増加や、建材価格・人件費の高騰により、デベロッパーが新築マンションの開発に慎重になっている事情があります」(同)

 これまで1都3県の平均価格を押し上げてきたのは、販売価格の高い東京23区の新築マンションだった。つまり、その供給量の減少が全体の平均価格を押し下げたのだという。

平均販売価格の下落にはカラクリが

 それでも、「東京23区の新築マンション平均価格が16.3%下落」という事実に、衝撃を受けた人も多かったようだ。

 SNS上では、

「マンションバブルの“終わりの始まり”」

「中国の経済状況が悪く、中国人が日本のマンションを買わなくなったのでは」

「ここから一気に暴落が始まるはず」

 と言った意見が散見された。

 ただ、東京23区の平均価格の下落にも、実はカラクリがあった。

「昨年1月〜6月期は超高級分譲マンションの販売が相次ぎました。中でも販売価格が飛びぬけていたのが、“三田ガーデンヒルズ”と、浜松町の“ワールドタワーレジデンス”という2つの港区の物件です。昨年同期の平均価格が1億2962万円と過去最高を記録したのには、この2物件の寄与度が大きかったのは明らかです」(都内の不動産関係者)

「三田ガーデンヒルズ」の総戸数は1002戸と大規模で、かつ30平米のワンルームタイプですら、販売価格が1億円を超えていた。70平米の平均販売価格は実に2.5億円にものぼり、350平米超のプレミア住戸の販売価格は45億円と、まさに“レベチ”の物件だった。

 地上46階地下2階建て、眼前に東京タワーが煌々と輝く間取りが多いこともセールスポイントとなった、「ワールドタワーレジデンス」も、平均販売価格は約2.5億円だった。

日経平均と同じ“歪んだ指標”?

 ところで、昨年同月比のマンション価格の下落に、この“2棟の高級マンション”の存在があることは、都内不動産の知識が一定ある人であれば、すぐに察しがついたそう。

 そのため、Xでは“ついに暴落”などとポストしたアカウントが、“マンションクラスター”と呼ばれる不動産マニアたちに「バカ発見器」と揶揄される事態にまで発展している。

「“日経平均株価”が半導体関連銘柄などの“値嵩株”の動向に大きく左右されるのと同じように、新築マンションの平均価格は一部の超高級物件の価格の影響を色濃く受けます。そもそもマンション価格の動向を示す指標としては相応しくないのです」(都内の不動産関係者)

 一方、都内では中古マンションの販売価格の伸びに鈍化が見られるなど、「頭打ち感」が出始めているのも事実という見方もある。

「建築コストは高止まりしたままですし、首都圏の土地価格にも下落の兆候は見られず、直ちにマンション価格が下落に転じるとは考えにくい。ただ、都心と郊外との販売価格の“二極化”や金利の見通しなど、気がかりなポイントがあるのも事実なのです」(同)

 7月〜12月期は一転し、東京23区を中心に大型案件の販売が相次ぐ予定。1都3県全体の販売戸数は約1万9000戸となる見通しだそうだ。

「新築マンションの平均価格はあくまで参考値」とは言っても、やはりその動向には注目したい。

デイリー新潮編集部

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