駅券売機に急増、「QRコード」は何に使うのか スマホと連携、LINEで切符購入も

JR各社の新しい指定席券売機に、QRコードを読み取るQRコードリーダーが備えられていることにお気づきの方はいるだろうか。最近では、JR東日本エリアでこのタイプの券売機を見掛けることが増えてきた。

「MV-50」と呼ばれるこの券売機は、これまでのタイプでは「指定席・自由席・特急券」などと文字が書かれていた本体上部の案内表示が「アイキャッチモニタ」と呼ばれる液晶画面になっており、そこにさまざまな情報を流すことができる。

駅でこのタイプを見たら、それがQRコードリーダーとタッチ式ICカードリーダーを搭載した新しい指定席券売機だ。

■QRコード、何に使う?

この券売機を開発したJRシステムのサイトには、「『みどりの窓口』に匹敵する多彩なきっぷを発売できるとともに、お客さまにとっての『使いやすさ』『分かりやすさ』を追求した多機能券売機です」とある。

アイキャッチモニタは、「フルカラーの新型ワイドディスプレイ『アイキャッチモニタ』で、取扱メニューの案内、サービス情報、季節に応じたおすすめ商品などの情報を静止画や動画でアピールできます。これらを活用することで、お客さまを効果的に誘導し、注目度&利用率を向上します」という理由でつけられたという。

QRコードリーダーやICカードリーダーについては、「簡易発券機能」として、「パンフレットに印刷されたQRコードや、IC付携帯電話などをMV-50形端末にかざすだけで、入力ミスなどのストレスなく、誰でも簡単に素早く商品を購入できます」と紹介している。

だが、今のところJR東日本ではQRコードを使ったサービスは見当たらない。今後、この機能をどのように使っていこうとしているのだろうか。

JR東日本に問い合わせてみると、このQRコードリーダーを使用したサービスは今のところはなく、今後QRコードリーダーを使用してどんなサービスを行うかは検討中とのことだ。現在は新旧の指定席券売機が混在しており、これを置き換えている途中だという。

一方で、このQRコードリーダーをすでに活用している鉄道会社がある。JR九州では、一部の駅にQRコードリーダーを備えた券売機を設置しており、ネットで指定席を予約したうえでコンビニや銀行ATMで決済し、そこで発行されたQRコードを指定席券売機に読み取らせて切符を発券するというシステムができている。

■スマホと連携で広がる可能性

また、JR九州は今年4月末から、同社のLINE公式アカウントで表示されるQRコードを使い、指定席券売機にかざすことによってボタン操作なしで割引切符が購入できるサービスも始めている。

対象となっているのは、福岡市内―熊本、福岡市内―鹿児島中央の「2枚きっぷ」である。LINEのJR九州公式アカウントを登録し、メニューから呼び出したQRコードを券売機のQRコードリーダーに読み込ませることで切符を購入できる。JR西日本でも、コンビニや金融機関で決済し、QRコードと電話番号で切符を発券するというサービスを行っている。

少しずつ活用が進んでいる券売機のQRコードリーダーだが、スマートフォンの画面に表示したQRコードを読み取らせるなどの方法によって、さまざまなことが可能になる。

2017年に千葉県の幕張メッセで開かれた「鉄道技術展」では、オムロンが「スマートフォン連動券売機」という、スマートフォンアプリで生成したQRコードを券売機で読み取り、必要な切符の購入画面を券売機に表示させるシステムを展示していた。

たとえば、鉄道会社のアプリや乗換案内アプリでQRコードを表示させることができると、切符を買いたい人があらかじめスマートフォンで調べておいたものをQRコードリーダーに読み取らせ、スムーズに発券できるようになる。調べた情報を、再度指定席券売機に入力する必要がなくなるのだ。

「都区内パス」や「青春18きっぷ」などの乗り放題パスについても同じことがいえる。これらのQRコードを鉄道会社のアプリに入れておけば、それを読み込ませるだけで簡単に発券できる。案内のちらしにQRコードを印刷しておいてもいい。

また、春先などの時期は通学定期券販売のために窓口が大変混雑するが、この解決策として活用することも考えられる。

現状では、学生証などを見せなければ通学定期券が購入できないという決まりになっているため、どうしても窓口にいかなくてはいけない。学校がQRコードを印刷した通学証明書を発行すれば、これで学生であることの確認を行い、QRコードリーダー付きの券売機で通学定期券を発行することができる。

■新しい活用法は生まれるか?

また、オムロンでは窓口の自動化対話技術を開発しているといい、こちらも「鉄道技術展」で展示していた。スマートフォンから所定のウェブページにアクセスし、利用者が要件を話し言葉で入力するだけで、対話エンジンが自動で回答を判断し、どんな切符を発券するのかを判断する。そして画面に表示されたQRコードを券売機にかざし、切符の購入が可能になるというものである。

さらに、決済についても可能性は広がる。中国などで広く普及しているQRコード決済だが、日本でもメガバンク3行がQRコード決済参入へ向け規格統一で合意したことが報じられるなど、国内でも決済手段として注目を集めている。クレジットカード大手のJCBは2018年度中にもQRコードを使った決済サービスを始める予定だ。

QRコードの活用が広がりを見せる中、券売機のQRコードリーダーは、さまざまな可能性がある。現在は「検討中」のJR東日本には、ぜひ新しい活用法を期待したい。

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