高くても好調ルノアール、安くても苦戦ドトール…喫茶店に明暗

この夏、外回りの最中に涼を取るためコーヒーショップを利用されたという方、多いのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが取り上げているのは、価格の二極化が進んでいる喫茶業界。高・低価格帯市場のそれぞれについて詳細に分析し、各々の今後を占っています。

ドトールより2倍以上高い「ルノアール」と「星乃珈琲店」が支持されているワケ

価格の二極化が進んでいる喫茶業界。高価格帯の代表格として、たとえば「喫茶室ルノアール星乃珈琲店」があり、低価格帯では「ドトールコーヒーショップ」がありますが、双方の代表的なメニューである「ブレンドコーヒー」の価格差は実に2~3倍にもなります。主力メニューでこれほどの価格差がある業界は、飲食業界では他に見当たらないのではないでしょうか。

喫茶室ルノアールのブレンドコーヒーは高額です。価格は店舗によって異なりますが、たとえば「歌舞伎座前店」(東京・中央)では640円(税込み、以下同)で提供しています。一方、ドトールは220円です。価格差は3倍近くにもなります。

同店はブレンドコーヒー以外のメニューも高額で、コーヒーや紅茶、ソフトドリンクなど飲み物の主要価格は600円台~800円台となっています。食事メニューも同様で、たとえば「ピザトースト」が700円、「ミックスサンドウィッチ」が660円となっています。

ルノアールは「都会のオアシス」をコンセプトとし、くつろぎの空間を提供することに注力しています。大正・昭和初期の雰囲気が漂うレトロな内装を採用しており、他の大手コーヒーチェーンにはない独特な趣があります。広々とした空間があるのも特徴的でしょう。休憩や読書はもちろん、打ち合わせやパソコン作業など仕事で利用するにも最適です。

ルノアールは現在約90店を展開しています。店舗数は近年少しずつですが増えています。運営会社、銀座ルノアールの喫茶室ルノアール事業の売上高は右肩上がりで成長しており、18年3月期は5年前と比べ23%増の59億円となっています。

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また、同社は都心型の高価格帯喫茶店として「Cafe ルノアール」と「Cafe Miyama」を現在計13店舗展開していますが、「今後は両ブランドを『Cafe ルノアール』に統合する」(8月22日付日経MJ)といい、喫茶室ルノアールと同じ名前を使って店舗網を広げていく考えです。

成長止まらぬ星乃珈琲店

星乃珈琲店も高価格帯のコーヒーチェーンとして知られています。「数寄屋橋店」(東京・中央)のブレンドコーヒーの価格は756円(価格は店舗によって異なる)とドトールの3倍以上にもなります。

同店は他のメニューも高額で、コーヒーや紅茶、ソフトドリンクなど飲み物の主要価格は700円台~800円台、パスタやドリア、カレーといった食事メニューは800円台~1,000円台となっています。

星乃珈琲店はアンティークのソファや時計、照明などを配置しており、内装は高級感があります。また、テーブル間に仕切りを設けたり、席の空間を広くとっているので他の来店客を気にせずに過ごすことができます。贅沢なくつろぎの空間を提供しているのです。

星乃珈琲店が誕生したのは11年です。比較的若いチェーンになりますが、国内で約220店を展開するにまで成長しました。年に平均30店増えている計算になります。今も店舗数は大きく増えており、成長は当面止まりそうもありません。

なお、星乃珈琲店はドトールを展開しているドトール・日レスホールディングスが運営しており、両チェーンは系列関係にあります。星乃珈琲店で高価格帯市場を攻め、ドトールで低価格市場を抑えるという戦略を描いています。

星乃珈琲店は9割以上が直営です。18年2月期の直営店売上高は前年比11%増の144億円でした。店舗数の増加とともに売上高も増えています。同社は他に、中価格帯の「エクセルシオール カフェ」(約120店)や「カフェ コロラド」(約50店)を展開していますが、後発の星乃珈琲店が店舗数において両者を抜き去っており、ドトールに次ぐ事業に育っています。

このように高価格帯市場はコーヒーチェーンにとって勢力拡大のチャンスが大きく広がっているといえますが、一方、低価格帯市場は競争が激化しており、難しい舵取りを迫られています。

コンビニまでもが脅威のドトール

低価格帯の筆頭格、ドトールは現在国内で約1,120店を展開していますが、店舗数は長らく1,100店台で推移しており近年は成長が見られません。飽和感が漂っています。またドトール・日レスが今年5月11日に発表した、4月の月次開示情報によると、ドトールの既存店売上高は1月から4月まで4カ月連続で前年割れとなりました。

さらに同社が7月13日に発表した2019年2月期第1四半期の連結決算では、期初の天候不順やディナータイムの客数減少を補えず、減収減益と低調だったということです。低価格帯のドトールでも苦戦している状況がうかがえます。

こうした状況から、ドトール・日レスは高価格帯の星乃珈琲店に力を入れているという側面があります。

低価格帯のコーヒーチェーンは他に、ホットコーヒーを240円で提供する「プロント」(約220店)やブレンドコーヒーが200円の「ベローチェ」(約170店)などが存在し、ドトールなどと顧客を奪い合っています

そして、コンビニエンスストアが大きな脅威となっています。セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社は100円台という圧倒的低価格でコーヒーを提供しています。3社とも販売に力を入れており、適宜リニューアルするなどしてコーヒーの品質を高めることに努めています。

3社合計の国内店舗数は現在5万1,000店を超えています。鈍化はしているものの店舗数は今でも伸びています。また、店内で飲食できるイトーインを併設した店舗を増やしています。コンビニのカフェ化が進んでいるといえ、低価格帯のコーヒーチェーンにとって大きな脅威となっています。

高価格帯市場ではルノアールと星乃珈琲店に勢いがあります。一方、低価格帯市場ではドトールを中心とした業界の垣根を超えた激しい競争が繰り広げられています。他に、スターバックスコーヒーやコメダ珈琲店が勢いを盛んにしており、業界内外での競争が激しさを増しています。勢力図がどのように変遷していくのか、目が離せません。

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image by: Wikimedia Commons(Kentin)

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