西日本の高級魚トラフグが宮城県亘理町沖合でも取れるようになり、同町の荒浜漁港で連日、水揚げされている。山口県下関市などが国内有数の産地となっていたが、海水温の上昇で生息域が北に広がっているとみられる。地元漁師は「荒浜のブランドに」と意気盛んだ。
町内の漁師山川育夫さん(71)は11月上旬、はえ縄でトラフグ漁を始めた。約25キロ沖合で、サンマやサバを餌にして多い時で1日100匹ほど取れる。年末年始の需要と重なり、相対で高値では1キロ当たり1万円前後の値段が付く。東京方面に出荷されるという。
相馬市の漁師からトラフグが豊漁と聞いたのがきっかけだった。道具をそろえて挑戦すると、体長40~60センチ、重さ2~5キロのトラフグが取れた。山川さんの好調ぶりを見て、漁港ではほかに5、6隻が漁の準備を進めている。
県漁協仙南支所亘理によると、トラフグの漁獲高は数年前まで定置網や刺し網などで年間200キロ程度だったが2019年度は600キロ、20年度は500キロになった。本年度は既に1500キロを超え、11月以降のはえ縄漁だけで約900キロに上る。
荒浜漁港では近年、サケが激減し、ヒラメやカレイも振るわないだけに、新たな資源として期待が高まる。山川さんは「価格が付くのでやりがいがある。荒浜の特産品にしたい」と意気込む。
仙南支所亘理は資源管理や操業ルールの検討も視野に入れ、持続可能なトラフグ漁を目指す考えだ。