新型コロナウイルスの感染食い止めのため、小売りでの来店客の密集防止が叫ばれている。政府などが必要に応じた入場制限を呼び掛けているスーパーと並び、焦点となっているのがドラッグストアだ。在宅勤務などで消費が増えた日用品を買いに訪れる人を減らすのは、容易ではない。加えて、マスクやトイレットペーパーを買うための早朝の行列も問題になった。
【グラフ】50~60代が突出、ドラッグストア来店者の増減率
では、実際にドラッグストアに実際に「殺到」しているのはどの年代で、時間帯はいつ頃なのか。「高齢者は~」「若者だから」などとどうしても印象論で語られやすいこうした消費者行動や世代差の実像について、購買データによる独自分析で迫った。「トイレットペーパー騒動」時、特に50~60代急増
分析は、ビッグデータによるマーケティング分析を手掛けるTrue Data(東京・港)が、全国のスーパーやドラッグストアにおける延べ約5000万人の購買情報を活用。レシートに加えてポイントカードによるPOS(販売時点情報管理)データを使い、その中からドラッグストアでの購買情報を抽出した。
さらに、新型コロナ問題が浮上する前に当たる2019年11月の各週の平均集客数を「100」として、浮上後の1~4月の各週分の数値を算出。各年齢層で、集客数の増減率をグラフ化した。
まず、全体的に増加率が最も突出していたのが2月24日の週だ。ちょうどここは、「トイレットペーパーが品薄になる」というデマがSNSやメディア報道で話題になったタイミングに当たる。
世代別に見た時に、この増加率が最も顕著に上昇したのが中高年、中でも50~60代となった。10~40代の伸び率が10~30%台となったのに対し、50~60代はいずれも40%超という結果だった。テレビなどの影響受けやすい世代
True Dataによると、小売店で家族の分も合わせて日用品や食料を買う消費を「代理購買」といい、その主体は家庭を持つ30~50代とされる。ただその傾向を差し引いても、トイレットペーパーの「買い占め」が発生した時期に、50~60代の来店が特に増加したと言えそうだ。
一般的に、こうした上の世代は若年層よりテレビを始めとしたマスコミの影響を受けやすいとされている。「トイレットペーパーの品薄」という話題についても、SNS上のデマだけでなくテレビなどが「デマの結果、実際に品薄になった店の様子」を頻繁に流したこともあり、特にこの世代に強く影響した可能性がある。
他の世代で来店数減っても「50~60代」は多め
トイレットペーパー騒動の後、全世代でドラッグストアの来店数の伸び率は徐々に低下し、平年並みに近づいている。ただ、逆に伸び率が反転して高まりだしたのが3月23日週だ。
これは東京都が初の外出自粛要請(3月28~29日)を出したタイミングに当たる。家族での長時間の在宅に備え、日用品や感染症予防向け商品などを買い求める人が多かったとみられる。
その後、緊急事態宣言が出され全国で外出自粛がより強く要請されるにつれ、10~40代の世代では徐々に平時(11月)並みに来店数は低下。最新データである4月13日週では、この4世代でいずれも平時を下回る来店者数となった。
ただ、ここでも来店者数が平時を上回ってしまっているのが50代以上の中高年となった。4月13日週で50代は平時より7.3%増、60代は13.3%増という結果に。日中働いている年代より来店しやすい点はあるものの、感染の不安に駆られやすいこうした上の年代が、外出自粛が叫ばれる中もマスクなどを求め、ドラッグストアを頻繁に訪れている可能性がある。やはり「50~60代」が「朝」に来店
こうした比較的高齢の世代については、マスクやトイレットペーパーを求め朝からドラッグストアに行列する様子が報道やSNSで話題となった。そこでTrue Dataは朝昼夜の時間帯別で来店数をさらに分析した。
各世代で「午後7時台」は、特に外出自粛傾向が高まるにつれ平時より来店者数が低下。逆に午前12時台はどの年代でもある程度増える結果になった。ただ、年代間で顕著な差が出たのはやはり、朝である午前9時台だった。
例えば最新の4月13日週では、10~40代が平時より1~20%台の伸びだったのに対し、50代は57.3%、60代は62.1%も増加した。トイレットペーパー騒動のため全世代で急上昇した2月24日週においても、50代は約2.9倍、60代も約2.8倍と突出している。「早朝、ドラッグストアに行列を作っていた比較的高齢層」というイメージは、データでもある程度裏付けされたと言えそうだ。
国や自治体から来店頻度の軽減を求められているスーパーと同様、ドラッグストアもまた、外出自粛下でも生活必需品を買うため来店せざるを得ない業態だ。ただ、感染時のリスクが高めの高齢層が同じタイミングで店に集まり「密」を作ってしまう事態は、やはり問題と言える。若年層だけでなく、この世代の消費行動を行政やメディアがどう変えられるかが問われる。