高齢者見守り、みやぎ生協や日本郵便も 市場拡大で参入相次ぐ

1人暮らしの高齢者の見守りサービスのニーズが高まり、業種を越えて注目が集まっている。高齢人口の増加に伴う市場拡大に加え、新型コロナウイルスの影響で離れて暮らす家族が訪れにくくなっている事情が背景にある。サービスを展開する企業は既存事業の強みを生かしつつ、新たな市場を取り込もうと躍起になっている。

 警備業大手の綜合警備保障(ALSOK)は、自宅に設置したセンサーが異常を確認した際に警備員が駆け付けるサービスなど各種プランを展開する。宮城支社によると、毎月50件近くの相談が寄せられ、利用者の評判も上々。同業のセコムは、設置工事が不要で緊急連絡ができる持ち運び端末「みまもりホン」に力を入れる。
 日本郵便は5月、南相馬市と提携し市内の高齢者を月1回訪れるサービスを始めた。配達員らが対象者を訪れ、家族らに近況を文書で報告する。東北支社の担当者は「元々は個人向けの商品だったが、自治体にも売り込んでいきたい」と語る。
 みやぎ生協(仙台市)は宮城県内の全市町村と提携し、夕食宅配サービスに高齢者の見守り活動を加えた。配達で異変を察知した際に自治体に連絡する仕組み。費用は従来の1食500~700円に据え置いたままで、夕食宅配の付加価値を高めた。
 見守りサービスの形態はセンサー対応型や訪問型、自動電話・メール案内などがあり、費用は月1000円~1万円程度。東日本大震災など自然災害が相次いだことも、遠隔地に住む高齢者の安否確認の需要を高めた。宮城県松島町で7月に起きた殺人事件の被害者もサービスの利用者で、早期発見が容疑者逮捕にもつながった。
 新型コロナの感染拡大やデジタル化の到来で市場環境が激変する中、各企業は市場参入に活路を見いだす。ALSOK宮城支社の担当者は「主力だったビルの警備需要は頭打ちの状況。高齢者を含む個人向け市場の開拓に力を入れたい」と意気込む。
 宮城県内では65歳以上の在宅1人暮らしが増加傾向にあり、3月末で13万9393人に上る。2022年以降は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となるため、市場はさらに拡大し、活性化する見込みだ。
 七十七リサーチ&コンサルティング(仙台市)の田口庸友首席エコノミストは「高齢者は当面増え続ける一方、見守る側は少なくなり、必然的にデジタルなどの技術革新を利用した見守りが必要になる。ただ、サービスには限界があり、高齢者を分散させないコミュニティーづくりも必要になってくる」と話す。

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