東京商工リサーチ(TSR)は21日までに、2019年に早期・希望退職者を募集した上場企業が延べ36社で前年比3倍に急増したと明らかにした。募集人数も約3倍の1万1351人(18年は4126人)に増加。業績不振で人員削減に追い込まれる企業がある一方、収益体質の強化へ先手を打つ動きが目を引いた。黒字でもリストラを断行する企業の実態が明らかになった。
TSRによると、36社のうち23社が減収減益や純損失に陥った「業績悪化型」で、業種別では景気減速の影響を受けた電機が最多だった。早期・希望退職者が1000人以上となった企業は4社で、富士通の2850人が最も多かった。
好業績でも人員削減に踏み切る「先行型」企業も目立った。製薬企業では増収増益にもかかわらず、薬価引き下げなどによる事業環境の悪化を想定し、構造改革を急ぐ動きが見られた。他の業界でも経営体力のあるうちに既存事業を見直す取り組みが進んでいる。
TSRによると、20年以降に早期・希望退職を募集予定の企業10社のうち7社が「先行型」だ。TSR担当者は「(業績悪化型と先行型の)二極化が進んでいく」と指摘する。デジタル化対応で必要な人材を社外から登用する動きも出ており、雇用は一段と流動化しそうだ。