スギ花粉は一部でピークを終えるとみられるが、4月上旬からはヒノキ花粉が飛散。いまだ、鼻水や目のかゆみなどに悩まされている人もいるだろう。鼻の症状が強い人は、「一体どれだけ鼻水が出るのか」と不安を抱く人もいるのでは? これまで多くの花粉症患者を治療してきた『クリニックフォア』亀戸院の院長・加納永将先生に、鼻水に関する疑問のアレコレを聞いた。
■鼻水ってそもそも何でできているの? 花粉症と風邪では違いが
鼻水は、鼻腔内の鼻腺や杯細胞から分泌される粘液と、血管の浸出液などが混ざったものです。鼻水は鼻粘膜の防御機構に深く関わっており、鼻呼吸に際して鼻からの吸気を加湿し、鼻腔内の水分バランスを一定に保つ働きを担っています。また、鼻水は体内に入ったウイルスや菌、体に必要ない不要物を体外に排出する役割も果たしており、一般的には毎日約1〜2リットルもの鼻水が生成されます。
とくに花粉症の人は鼻水の量が増える傾向があります。これは、花粉が鼻の粘膜に付着すると、体はそれを異物と認識し、鼻水を生成してそれを排出しようとするから。花粉症の鼻水は、風邪の鼻水のようにねっとりしたものではなく、涙と成分がほとんど同じで、無色で粘り気がなくサラサラしているのが特徴です。
■鼻水はすする? 出す? 鼻をかむときの圧力が体に影響を及ぼすことも
――花粉症で「鼻水が出すぎて脱水症状にならないか?」と不安を抱く人さえいますが、実際はどうなのでしょうか? 水分を摂ったほうがいいのですか?
「脱水症状は、体内の2〜3%以上の水分が失われることで引き起こされます。鼻水だけで脱水症状になることは考えにくいと思われます。また、水分を多めに摂ることで花粉症の症状が和らぐということは基本的にはありません。一方で、冬から春にかけて、涼しい時期は喉の渇きを感じにくく水分補給がおろそかになり、加えて空気が乾燥していると、体から水分が失われてしまいます。そのため、体の免疫機能を維持するためにも、体内の水分量を適切に保つことが大切と考えられます」
――脱水にならなくとも、鼻水の出すぎで体に問題が出ることは?
「鼻水はすするよりも出したほうがいいので、出しすぎることで体への悪影響はないです。ただ、あまりにも大量の鼻水が続いた場合には副鼻腔炎なども考えられますので、一度医療機関に行くことをお勧めします。また、鼻をかむことによって生じる圧力が、脳にまで影響を与えて頭痛を引き起こしたり、気管からの強い気圧が耳の痛みにつながることもあります。強くかむことで中耳炎を引き起こす場合もあるので、やさしくかむようにしましょう」
――鼻水をすすっているうちに飲み込んでしまうこともありますが、問題は?
「できるだけ飲み込まないほうがいいですね。鼻水をすすると、中耳内の気圧が下がり陰圧になります。すると中耳炎になったり、鼓膜が耳奥の骨と癒着してしまったりする場合があります。その他、細菌やウイルスがついた鼻水が喉に流れることで、喉の炎症を引き起こす恐れも。通常、鼻水の多くは喉を通り胃に降りていきますので、意識せず鼻水を飲み込んでいるものではあるのですが、鼻に降りてくる鼻水はできる限りかんで出してしまうほうが良いです」
――鼻のかみすぎで肌が荒れるなど、皮膚について注意点は?
「鼻をかむときにはどうしても肌をこすってしまうので、ティッシュによる摩擦が起こります。回数が増えることで赤みやヒリつき、皮むけなどが起きてしまうことも。ティッシュでやさしくふきとるようなイメージでかむのが良いのではないでしょうか」
■GWまで続く花粉症、「来年こそは!」という人が今からやるべき治療法
――今年の花粉症はいつまで続きそうでしょうか?
「5月のGW頃までは続くのではないかと思います。3月はスギ花粉とヒノキ花粉が重なり、強い症状に悩まされる人が多かったかと思いますが、4月はスギ花粉の飛散が落ち着いていき、ヒノキ花粉の飛散がメインになります。ヒノキ花粉のほうが、喉や目の粘膜の炎症が強く出る傾向にあるので、症状にも違いが出てくるかもしれません」
――花粉症の症状で悩む人に、アドバイスをお願いします。
「3月ごろがピークと思われがちな花粉症ですが、GW頃まで症状が続く方は多くいらっしゃいます。鼻水やくしゃみが続くと旅行や行楽も楽しめないので、症状がある方はお薬を使ってみることをお勧めします。少し気が早いかもしれませんが、来年2025年の花粉症の対策として舌下免疫療法を検討されている方は、治療開始時期が5月下旬〜6月以降となります。来年こそ花粉症から少しでも解放されるために、医療機関に受診されることも良いでしょう。また夏のイネ科の花粉症や、秋のブタクサ、ヨモギの花粉症もお持ちの方は、引き続きお薬を継続されることが望ましいと思われます」
【監修者】加納永将(かのうながまさ)
クリニックフォア亀戸院院長。順天堂大学を卒業後、順天堂医院に勤務し、プライマリーケア領域を中心とした診療を行う。その後、離島の村医として、僻地医療や在宅医療に携わり、2023年にクリニックフォア亀戸院院長に就任。