龍角散の喉あめ品薄状態 コロナ対策で「爆買い」「転売」 生薬栽培の秋田2町困惑

喉の薬として知られ、秋田県にルーツがある「龍角散」の関連商品が全国的に品薄状態にある。仙台市内でもドラッグストアなどで売り切れが続く。新型コロナウイルス感染による喉の痛みに加え「爆買い」も原因とみられ、原料となる生薬植物を出荷している同県の自治体関係者は気をもむ。(報道部・武田俊郎)

■「悪乗りしないで冷静に」

 20日、JR仙台駅前のドラッグストアでは龍角散の関連商品の陳列棚だけが空になっていた。「中国人と見られる客がごっそり買っていく。人海戦術ですぐに商品がなくなる」と店員が明かす。こうした状況は年明けに始まったという。
 宮城野区のみやぎ生協幸町店でも年明けから品薄が続く。同店では店頭での買い占めは見られず、「主に供給量の低下が原因。今月は前年同月比で65%減の状態だ」と説明する。
 製造・販売する龍角散(東京)は10日、同社ホームページで「龍角散の のどすっきり飴(あめ)」シリーズが品薄となったことへの「おわび」と、関連商品の販売休止を公表。「通年では考えられない急激な需要拡大で生産可能数を超えた」と弁明した。
 同社の広報担当者は「主に中国人が日本国内で買い占め、母国へ送ったのが原因」と話す。中国政府のゼロコロナ政策転換で、国民は自己責任で感染対策を求められている。そこへ「喉の痛みに龍角散が効く」との情報が交流サイト(SNS)で広がり、日本国内での需要増も重なったことが品薄を招いたようだ。
 龍角散は江戸後期、秋田県美郷町六郷出身の医師藤井玄淵(げんえん)(〜1827年)が考案したとされる久保田藩(秋田藩)の家伝薬だ。古くからの縁に着目した町は「生薬の里」構想を打ち出し、2013年に同社と連携協定を締結。生薬となるキキョウを年間200キロ出荷する。
 同じく生薬植物の栽培をPRする同県八峰町もキキョウを年間536キロ、カミツレ同50キロを出荷し、同社との関係を深めている。
 品薄について、美郷町農政課は「通常価格より高値で転売する動きも見られる。あまり悪乗りしないでほしい」と困惑。八峰町農林振興課は「生薬植物の栽培に影響はなく、知名度アップはいいこと。(品薄問題に)町が介入できる部分はなく、静観するしかない」と行方を注視する。

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