1億5千万円の経常利益

 この会社は地方の広告代理店の小規模のネットワークに加入している。ネットワークといっても仕事の付き合いはほとんど無く、年に一度、代表者が集まって飲んで騒ぐ程度のものだが。今年もその会議があり、代表に千田部長と関谷くんが選ばれた。そのときには各社のその年の売上や利益などを報告しあうのである。
 会議が終わり関谷くんがおもしろいものを見せてくれた。それは各社の売上などが表になっているものである。そのなかで比較して見るとなかなかおもしろい事実が浮かび上がる。我が社は経常利益が一番多く何と1億5千万円、人件費率や平均給料は一番低く、経費率が一番高い変な会社であることが分かった。
 この数字が正しければ働いている人にとってはあまりよろしくない。総人件費が8千万円もないのに経常利益が1億5千万円もあるのである。少しは給料払えよ、と思ったがこの社長ではな、と思いやる気がなくなった。
 でもこの数字にはマジックがある。前にも書いたように、あの1億円のゴルフ場企画が含まれているからである。もし、本当にこの利益なら7千万円以上の事業税を支払わなければならず、この小さい街でそれだけ儲かっている会社ならすぐ番付に出てしまうのである。さて、どのように脱税したのであろうか。僕には謎だ。
 今まで、会社の経費を少しでも押さえようとしていたが、タクシーとかばんばん使い、経費のことなど気にしないで仕事をするようになってしまった。それ以来、僕と関谷くんの合言葉は、「大丈夫。この会社は儲かっているから。」になってしまった。
 追伸、この会社は決算が7月なのでその年の番付には出ないのだが、翌年の番付にもやはり出ていなかった。税金払えよ、捕まる前に。

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