10年後の姿を具体化 宮城県復興計画最終案

 宮城県は17日に決定した県震災復興計画最終案で、被災した沿岸15市町を3地域に分けた広域的な復興イメージを示した。
◎原発対策/不安解消へ測定と検査
 福島第1原発事故による風評被害の払拭(ふっしょく)や県民の不安解消に向け、大気中の放射線量測定、農林水産物の放射性物質検査の体制強化を緊急重点事項として新たに盛り込んだ。
 事業は復旧期に集中させる。測定機器を整備し、県産牛を含む農林畜産物の検査を徹底。食品関連などの輸出品も測定し、輸出産業を支える。
 全壊した女川町の県原子力センター、県原子力防災対策センターの再整備も進め、女川原発周辺での放射能監視機能、災害対応機能を回復、拡充を図る。原子力災害時の迅速な対応を図るため、全庁的な組織体制を構築する。放射線関連の情報発信にも力を入れる。
◎農林業/共同作業に支援金交付
 復旧期を中心に、早期の営農再開を重点的に支援する。被災農家経営再開支援事業(11~15年度)では被災した農地のほか園芸施設、畜舎の復旧に向け、農業者の共同作業に支援金を交付する。
 被災した林業・木材産業の施設再開に向けた支援事業を11年度に実施。合板製造業者や製材所に製造機械などの再整備、修理の経費を補助する。
 再生期から発展期にかけては、先進的な農林業の構築を目指す。国の事業などを活用し、15年度までに農地の面的集約を進める。農業参入推進事業として、民間資本を活用した生産力の向上や地域農業の活性化を図るため、今後10年間で企業の農業参入を促す。
◎水産業/漁港は3分の1に集約
 水産業の拠点の再構築を目指し、県内漁港を3分の1程度に集約する。再編に伴い、県は9月以降、漁業集落の復旧復興計画策定に着手。被災市町を通じ、住民の意向を調べ方向性を探る。
 主な漁港と一部漁場では、がれき撤去を7月中に終え、沿岸漁業や養殖業の再開に道筋を付けた。共同利用する冷凍・冷蔵施設などの整備費を15年度まで補助し、流通加工業の復旧も進める。
 漁業経営改善支援事業では11~20年度、県が漁船や漁具を調達し、漁協や県水産公社を通じてリースする。零細な経営体が多い漁業者に対し、施設の共同利用や作業の協業化を促し、経営の安定化を図る。
◎環境・生活/再生エネでエコタウン
 福島第1原発事故後、エネルギー不安が深刻化している事態を踏まえ、太陽光や小水力、風力などの再生可能エネルギーを積極活用する「エコタウン」の形成を掲げた。
 太陽光、バイオマス発電などを「分散型電源」と位置付けた。原発や火力など既存の電源に頼らない災害時の電力確保と、環境配慮の街づくりの両立を目指す。被災者が再建する住宅や新たに建設する復興住宅の全戸で、太陽光発電設備を整備することを盛り込んだ。
 災害公営住宅建設の円滑化を図るため、用地確保を含めた民間企業からの事業提案を活用。被災者の住宅再建では、県産木材使用への支援も打ち出した。
◎沿岸15市町3分割し対応
 県は17日決定した県復興計画の最終案に、今後10年間で取り組む計341事業を盛り込んだ。2011~13年度を復旧期、14~17年度を再生期、18~20年度を発展期と位置付けた。最終案には「原子力災害への対応」を緊急重点事項に追加。競争力強化に向けた農林水産業の再構築、再生可能エネルギーを活用した先進的な街づくりも重点項目に設定した。
<仙台湾南部地域/交通網活用、物流拠点に>
 大津波を第一線で防ぐ海岸堤防、防災緑地の整備と平行し、高盛り土構造の道路と鉄道で多重的な防御を目指す。産業面では仙台港、仙台空港の広域交通拠点と常磐、三陸自動車道の高速道路網を活用し、高度電子機械産業などの立地と物流拠点の形成を促す。
 平地部の農地は集約し、施設園芸や露地野菜の振興、水田の大規模化、畜産の生産拡大を図る。
<石巻・松島地域/高盛り土で多重に防御>
 大津波対策は、入り江の地域と平地を分ける。高台移転と職住分離に取り組む一方、高台確保が難しい平地では高盛り土構造の道路や鉄道で多重に防御する。
 石巻地域では製紙業、木材加工業など重要産業の再興を図る。漁港は集約し再編。漁業地域を中心に食品加工業、高度電子機械産業の集積を目指す。松島や牡鹿半島では観光振興を加速させる。
<三陸地域/高台移転と職住を分離>
 大津波による再度の被害や地盤沈下による冠水を防ぐため、高台移転と職住分離を推進する。海辺に避難路や避難ビルを確保した上で、漁業地域を中心に産業・観光・公園ゾーンを整備。三陸縦貫自動車道を気仙沼市まで延ばし、沿岸部の高速交通網の完成を急ぐ。
 水産業を中心に産業集積を図り、水産加工品のブランド化を目指す。漁港は集約、再編する。

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