東北の地方銀行、第二地銀13行・グループの2022年3月期決算が出そろった。純利益は総計572億円で、前年21年3月期の265億円から倍増した。3行・グループが黒字に転換し、残る10行・グループが増益。新型コロナウイルスの経済対策で景気持ち直しが進み、企業倒産も抑えられて与信関係費用が大幅に減り好業績につながった。
各行の主な決算内容は表の通り。
純利益が前年比35・0%増え過去最高になった七十七銀行の小林英文頭取は「顧客のニーズを適切に捉え積極的に資金供給し、コンサルティング営業に注力した」と振り返る。前年は20年ぶりに純赤字を計上した東邦銀行も黒字に転換。佐藤稔頭取は「資金や役務取引の利益に加え、経費や与信関係費用の圧縮で、V字回復できた」と述べる。
不良債権処理費や貸倒引当金の与信関係費用は10行・グループで減少。総計で182億円と前年(374億円)から半減した。
岩手銀行は32億円減の10億円。これまで多額の貸倒引当金を計上した反動といい、田口幸雄頭取は「コロナの先行きは見通せないが、先を見越した引当金は必要だ」と説明。6億円減った大東銀行(郡山市)の鈴木孝雄社長は「コロナの影響で今後増える可能性はあるが、大口投資先がないので急増はない」とみる。
本業のもうけを示すコア業務純益は10行が増加。秋田銀行の新谷明弘頭取は「利益は経費の削減で出た。時間外勤務の大幅削減などの積み重ねが結果につながった」と語る。
23年3月期は景気の先行きの不透明さを反映し、8行・グループが減益を見込む。
人口減などで地銀の経営環境は厳しさを増し、動きが相次ぐ。13日、じもとホールディングス(HD、仙台市)が傘下のきらやか銀行(山形市)への公的資金注入の申請検討を始めると発表。青森銀行とみちのく銀行(ともに青森市)は4月に経営統合し、共同持ち株会社プロクレアホールディングスを設立した。
大和総研の鈴木文彦主任研究員は「与信コストが減ったことによる好決算だ。昨年は政府の財政支出で景気が持ち直したが、同じペースの支出は続かない。コロナ融資の返済や円安といった懸念材料があり、東北の地銀はこれからが正念場だ」と指摘する。