112万人分の年金資産を放置、転職・退職時に必要な手続きせず…企業型DC

企業が掛け金を払い、従業員が運用する企業型確定拠出年金(企業型DC)で、約112万人分の年金資産が放置された状態になっていることが1日、国民年金基金連合会のまとめでわかった。2017年度末から1・5倍になった。総額は昨年度末で約2600億円に上っている。転職時などに必要な手続きをとらなかったためで、運用機会を逃し、老後の資産形成に影響を及ぼす可能性がある。 【イラスト解説】一目でわかる、公的年金と企業型DCなど上乗せの仕組み

 企業型DCの加入者は年々増加しており、全国で約780万人にのぼる。転職などで会社を辞めると加入資格を失う。積み立てた年金資産は、6か月以内に個人型確定拠出年金(iDeCo)などに移す手続きをしなければ、同連合会に自動的に移管され、その後は運用されない。

 同連合会によると、年金資産が自動的に移管された人は2021年度末で108万3116人おり、公表している17年度末の73万4243人から47%増えた。総額は2587億5200万円で37%増加した。1日に発表された9月末の自動移管者数は112万6145人だった。

 自動移管された資産は塩漬けにされるだけでなく、移管時に4348円、以後の管理に毎月52円の手数料がかかるため、目減りしていく。

 受給開始年齢に達しても、そのままでは年金として受け取ることはできない。手数料をかけてiDeCoなどに移す必要がある。移管中は通算加入期間にカウントされず、受給開始が遅れる場合もある。

 増加している背景には、退職時の忙しさや、制度の理解不足がある。東京都内の女性会社員(41)は昨年8月に転職。半年後に自動移管の通知を受けた。「以前勤めていた会社から説明を受けた記憶はない。知らない間にお金が移され、手数料が引かれるのは釈然としない」と話す。

 同連合会は毎年1回、対象者に通知を出し、手続きをするよう促している。厚生労働省は「企業が掛け金を負担するため、自分の資産という認識に乏しく、自覚なく放置する人が多い。退職者への説明義務を企業に徹底させるなど、周知を図りたい」としている。

ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんは「老後に向けた資産形成が求められる時代に、貴重な年金資産が放置され目減りしてしまうのは問題だ。退職時の移管手続きの簡素化などの対策が求められる」と話す。

 ◆企業型確定拠出年金(企業型DC)=2001年10月に導入された年金制度の一つ。企業が従業員のために掛け金を支払い、従業員が自らの積立金の運用方法を決める。将来の年金額は運用の結果次第で変わり、原則60歳まで受け取れない。

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