13年プロ野球表彰 東北楽天・田中 晴れやかMVP

プロ野球コンベンションが26日、東京都内のホテルで開かれ、今季の最優秀選手(MVP)にパ・リーグは東北楽天の田中将大投手(25)、セ・リーグはヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)がともに初めて選ばれた。田中は1位票を独占し、満票での選出となり、バレンティンは最下位チームから初のMVPとなった。
 田中は開幕から24連勝して稲尾(西鉄=現西武)の20連勝を大きく更新した。今季は28試合に登板して24勝0敗1セーブ、防御率1.27の驚異的な成績で、プロ野球史上初めて無敗で最多勝を獲得。チームを創設9年目で初のパ・リーグ優勝と日本一に導いた。
 バレンティンは今季60本塁打を放ち、1964年の王(巨人)、2001年のローズ(近鉄)、02年のカブレラ(西武)が持っていたシーズン55本塁打のプロ野球記録を49年ぶりに塗り替えた。
 MVPは日本シリーズ開幕前までのプロ野球担当記者らによる投票で決まる。3人連記で1位票は5点、2位票は3点、3位票は1点が加算され、合計点で争う。ことしの有効投票総数はパが233票、セが273票。バレンティンは200票の1位票を集めた。
◎驚異の活躍、文句なし
 「チームがリーグ優勝、日本一と最高の結果を残せてよかった。僕自身、チームの一つのピースになれた」。紺色のスーツに身を包んだ田中は、シンプルな言葉で喜びをかみしめた。
 驚異的な活躍だった。プロ野球新記録の開幕24連勝で最多勝、最優秀防御率1.27、無敗で勝率1位という投手3冠を達成。「一試合一試合、勝つんだという気持ちの積み重ねでここまでこられた」
 3位までを連記する投票で1位票を独占しただけでなく、4割近くが2位に記載がなかった。比較対象に事欠くほど飛び抜けた成績だったことの表れといえる。
 リーグ優勝、日本一を決めたマウンドに立ち、歓喜の輪の中心にいた。球団初の日本一の立役者だが「勝ち星は投手だけではどうにもならない。チームに助けられた一年だった」と謙虚に語る。
 「田中のためのシーズン」と言っても過言ではないが、今季の滑り出しは順風満帆ではなかった。日本のエースとして臨んだワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では「思うような結果が残せず悔しい思いをした」
 だが、逆境を力に変えられるのが田中の真骨頂。「借りを返せるわけではないが、シーズンでしっかり働こうという気持ちを強く持った。原動力、活力になった」。WBCを機に会得したというカーブはシーズン中、何度も自身を助けた。
 東北楽天の選手がMVPを受賞するのは2008年の岩隈以来2人目。初代エースは12年、米大リーグ挑戦のため海を渡った。2代目エースも同じ思いを抱いているが、去就は明確にしていない。
 来季の目標を問われると「今季の成績はうれしいが、満足はしていない。投球内容、質を求め続けながら、結果も残していきたい」。高い向上心を持ち続ける右腕にとっては、最高の栄誉を手にした今季も一つの通過点に過ぎない。(佐藤理史)
<田中将大(たなか・まさひろ)>北海道・駒大苫小牧高から07年に高校生ドラフト1巡目で東北楽天入団。今季は2年ぶりの最多勝や沢村賞を獲得。08年北京五輪、09、13年WBCの日本代表。188センチ、93キロ、右投げ右打ち。25歳。兵庫県出身。
◎「若い人が挑戦するのはいいこと」/楽天・三木谷オーナー
田中のポスティング容認示唆
 東北楽天の三木谷浩史オーナーは26日、米大リーグ移籍の希望を持つ田中将大投手について「個人的には、若い人が挑戦するのはいいことだと思う」と述べ、田中がポスティングシステム(入札制度)の新制度を使って大リーグへの移籍を希望した場合、事実上容認する考えを示唆した。
 東京都内の楽天本社で星野仙一監督らから今シーズンの報告を受けた後、報道陣に答えた。
 三木谷オーナーは「制度が決まらなければ『たられば』を話してもしょうがない。新制度が決まったら、球団から正式な話がある」と前置きした上で、田中の希望に理解を示した。
 三木谷オーナーは同日、短文投稿サイトのツイッターでも、「田中投手はメジャーに行けるのでしょうか」という趣旨の質問に対し「正直、うちの球団にとっては、痛いけど、若者がチャレンジする事はいい事だと思います」と答えていた。
 田中は昨年12月の契約更改交渉の場で3年契約を結んだが、将来的な大リーグ挑戦の希望があることを球団側に伝えた。今オフの米大リーグ移籍を希望するかどうか、明言していない。
<星野監督「選手からのプレゼント」>
 東北楽天の星野監督は正力松太郎賞とパ・リーグ最優秀監督賞を受賞し、「選手がプレゼントしてくれた」とナインに感謝した。
 初のリーグ制覇と日本一を達成した今季について「けっこう楽しかった。春先は苦しんだが、夏以降は選手と楽しんでいた」と振り返った。銀次や岡島ら星野チルドレンが台頭し、つかんだ栄冠。「若い選手が出てくると、涙が出るほどうれしい」と目を細める。
 24日には仙台で21万人を集め、優勝パレードが行われた。「被災地の皆さんを勇気づけることができ、一つ仕事を成し遂げた」と感慨に浸った。
☆イヌワシ ろっかーるーむ
<宮川将投手(イースタン・リーグ優秀選手賞に選出)>
 「右も左も分からない中で投げて、結果を残すことができた。来季は1軍のマウンドで、同期の則本投手のようなピッチングをしたい」
<上園啓史投手(イースタン・リーグ防御率2.54で最優秀防御率賞を受賞し)>
 「来季は1軍で勝利に貢献できるように頑張ります」
<MVPの得票数>
【パ・リーグ】       1位  2位  3位   得点
(1)田中将大  (楽) 233   0   0 1165
(2)長谷川勇也 (ソ)   0  26  28  106
(3)マギー   (楽)   0  27  19  100
【セ・リーグ】
(1)バレンティン(ヤ) 200  38  21 1135
(2)村田修一  (巨)  34  65  54  419
(3)阿部慎之助 (巨)  31  68  32  391
(注)上位3選手。1票につき1位に5点、2位に3点、3位に1点が与えられる

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