約2億年前の恐竜時代の姿をとどめる未知の「古代ウナギ」を、北里大など日米の共同研究チームが西太平洋・パラオ諸島の海底洞窟(どうくつ)で発見した。ウナギの仲間では最も原始的なタイプで、約70年ぶりに新たな「科」に分類された。ウナギの起源に迫る“生きた化石”として注目されそうだ。三重県で開かれる日本魚類学会で24日、発表する。
このウナギはパラオ在住の海洋生物研究家、坂上治郎さん(43)が昨年3月、水深数十メートルの海底洞窟で発見。9匹を捕獲し、大学院時代に師事した井田斉北里大名誉教授(魚類生態・分類学)らと分析した。
成魚は黒褐色で全長は最大約20センチ。一般的なウナギ類と比べて脊椎(せきつい)骨の数が少なく、ずんぐりした体で、独立した尾びれがあるなど特異な形態を持つ。約7千万年前のウナギ類の最古の化石よりも原始的な特徴をとどめていた。
千葉県立中央博物館がミトコンドリアDNAを分析したところ、19科あるウナギ類のどの科にも属さない新種と判明。進化の系統を調べた結果、約2億年前の中生代三畳紀後期からジュラ紀前期に、現存するウナギ類と枝分かれした最も原始的なウナギと分かった。
ウナギ類は2億数千万年前、普通の魚から分かれ、海底を泳ぐのに適した細長い体になった。今回の古代ウナギは、この進化過程の初期に位置するという。
井田名誉教授は「ウナギのルーツを知る上で重要な生きた化石だ。他者との競合を避けるため洞窟に隠れ、今日まで生き延びたのだろう」と話す。古代魚として有名なシーラカンスも海底洞窟がすみかだ。
「科」は、生物分類上の基本単位である「種」より2階級上(1階級上は「属」)の大きなグループ。新しい科に分類される脊椎動物の発見はまれで、ウナギ類では1936年にフランスの研究者が発見して以来。
パラオには海底洞窟が多数あるが、このウナギは1カ所でしか見つかっていない。坂上さんは「個体数が非常に少ないので心配。生息環境の保護に取り組みたい」と話す。標本は共同研究した米国立自然史博物館などに保管される。(長内洋介)