昨年の世界のメーカー別自動車販売台数が出そろった。僅差で争う首位のトヨタ自動車、2位の米ゼネラル・モーターズ(GM)を横目に、“2強”を完全に射程圏内にとらえてきたのが、中国などの新興国に強みを持つ独フォルクスワーゲン(VW)だ。さらに韓国・現代自動車は米ビッグスリーの一角、フォードモーターを抜いてトップ5に入るなど、ひたひたと上位勢に迫ってきた。
■トヨタ辛くも首位
大量リコール(回収・無償修理)が響き米国で苦戦したトヨタが、経営破綻からの再生を本格化させるGMの猛追をかろうじて振り切った昨年の自動車販売競争。だが、激化する2強の争いとは別に、それに続く“第2グループ”の勢力図も大きく変化し始めた。
昨年の世界ランキングで最も存在感をみせつけたのがVWだ。初めて700万台を突破し、今後の世界首位が現実味を帯びてきた。
好調の背景には、いまや世界最大の自動車市場となっている中国市場での強さがある。早くから中国に進出したVWは昨年、中国での販売台数を37.4%も伸ばし、乗用車のシェアは約16%に達している。このほかインドやブラジルなどでも上位グループに入っており、新興国にシフトする戦略が効果を上げている。
■韓国・現代も猛追
そのVW以上に勢いをみせつけたのが現代で、前年比が24%増と上位各社を圧倒する伸びをみせた。現代の好調さは、2008年9月の「リーマン・ショック」後に顕著となった。08年末に米国で「失業したら、ローンで購入した自動車をコストなしで返却できる」という新キャンペーンを展開したことが成功。昨年からはウォン安も追い風に輸出を拡大させ、全世界で販売攻勢を強めている。
VWだけでなく現代も新興国での事業拡大を重視している。この点では中国で躍進したGMも同じだ。これに対してトヨタは、北米などと比べて新興国市場での相対的な出遅れが目立つと指摘されている。
トヨタの豊田章男社長(54)は「米国でカムリ(セダン)がブランド別首位、(高級ブランドの)レクサスが好調など、戦略通りの展開だ」などと引き続き米国市場への期待感を示している。しかし、今後、VWや現代などの猛追をかわすには、新興国でのさらなる販売強化が欠かせない。
(SANKEI EXPRESS)
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≪スズキ、アジア好調で増収増益≫
スズキが2月7日発表した2010年4~12月期連結決算は、主力のインドを中心としたアジアで自動車販売が好調だったため、売上高は前年同期比8.4%増の1兆9277億円、最終利益は2.75倍の426億円の増収増益だった。
■主力のインド3割増
地域別の自動車販売台数は、インドが82万台と3割強増えたほか、中国やインドネシアなどのアジア地域も大きく伸びた。エコカー補助金が終了した日本は43万6000台と微増だった。
欧州と北米はそれぞれ17.8%減、24.7%減と振るわなかったものの、アジアの好調により、世界販売台数は4~12月期の過去最高を更新した。
二輪車事業は欧米を中心に不振で、営業赤字が70億円だった。
また、スズキはエジプトの工場の操業を政情不安により1月30日から停止、2月6日から再開したことを明らかにした。
(SANKEI EXPRESS)