政府は省エネ性能の高い木造建築物を増やすため、建築基準法の規制を緩和する方針を固めた。脱炭素化の取り組みの一環として、3階建て木造住宅を建てやすくするため、建物の高さ制限を緩め、行政手続きやコストの負担を減らす。来年の通常国会に同法改正案を提出する。
現行の建築基準法は、高さ13メートルまたは軒の高さが9メートルを超える木造住宅に、追加の手続きを求めている。追加手続きには、専門家による安全性の解析が新たに求められ、数十万円程度のコストがかかる。政府はこの規制を16メートル超に緩和する方針だ。
近年の戸建て住宅は、高断熱・高気密の省エネ性能を追求しており、以前よりも建物が高くなる傾向にある。床に断熱材を敷いたり、天井裏に換気用の管を設けたりする必要があるためだ。国土交通省の試算によると、通常の3階建て住宅の高さは平均12・9メートルだが、省エネ住宅の場合は同15・5メートルになると見込まれる。
地価の高い大都市部では少しでも居住面積を確保しようと、3階建ての一軒家を建てる需要が高まっている。同省は高さの基準を緩和すれば、3階建て省エネ木造住宅を建てる際の追加負担が減り、普及につながると見込んでいる。
政府は併せて、大型の店舗やホテルなどに木造の別棟を隣接して建てる場合の防火規制も見直す。現行法では、渡り廊下などでつながっている場合、木造の別棟にも大型建物と同程度の防火性能を求めてきた。法改正後は別の建築物と見なし、それぞれに応じた防火性能を備えればよいとする。例えば、8階建ての商業ビルに隣接して木造の2階建て飲食店を設置したり、大規模工場につなげて木造の休憩小屋を建てたりするケースが想定され、木造建築とビルを複合させた建物が建てやすくなる。
林野庁によると、木造住宅は鉄骨や鉄筋造に比べ、建築時の二酸化炭素(CO2)排出量が4割程度少ない。木材加工技術の進歩で、耐火性や強度が大幅に上がってきたこともあり、不動産業界では木造建築に取り組む動きが相次いでいる。